鹿島美術研究 年報第1号
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ら」の45.4%である。次いで多いのは「仕事などで忙がしいため」の36.4%である。他に「何となくおっくうだから」「美術に興味がないので」「自分とは関係のないところ」といった無関心派がそれぞれ2割前後の数字を示している。しかし,彼等のうち当館以外の画廊やデパート展などを利用した事のある人は75.6%もいるのである。さらに今後の道立近代美術館利用意向については,全体の約7割が出向きたいとしている。ただし機会があればと答えた者が5割強である。必ず今後も利用したいと答えたものは全体の15.3%であった。えあわせると,この数字は極めて悲観的といわざるを得ない。「機会があれば」と回した者の大半は非利用者である。この利用に対する消極性にどう対応すべきか,確かな方策を求めることはむずかしい。確かに美術館というものに対する一般的なイメージは,まだ`気持ちが休まり”‘ためになる”所というものばかりではない。また美術という特殊な芸術分野に対する個別的な趣味性の拡大にも当然ながら限界はある。さらには,交通便の問題,開館日や時間の問題など,利用者の意向にそぐわない面も多くあるのが現状である。今回の調査で表されたこれら非利用者の実態をみると,いわゆる中間派,浮動派的層の動向が,今後の利用率に大きく影縛を与えることは明らかである。彼等の一部には,美術に少しは関心があると答える者もあるが,大方は,家族や知人に美術あるいは他の芸術文化の関係者,関心をもつ者を有していない事,美術館を利用したことのある人が一人もいないこと,などの結果が出ている。つまり彼等をとりまく環境自体が美術館と無縁の日常にあるという事である。美術館の存在を充分に認知し,特別美術に嫌悪を感じる訳でもない彼等が,今後いかに美術館利用の「きっかけ」をつかみ得るか,その意識改革のために美術館はいか程の積極性をもって対処すべきか,さらに調査を進め,一つの限界を自覚しながら方策を摸索してみたいと思うのである。(8) 平安前期木彫の技法様式に関する調査研究研究者:東京国立博物館研究員浅井和研究報平安前期の木彫像については,現在,乾漆(木屎漆)使用の有無を漆併用木彫系と⑤純木彫系の二つの系統分類が行なわれているが,本研究ではまず第よりたてまえの回答が多少多くなっていることをとして④乾56-

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