鹿島美術研究 年報第2号
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1)紀元前9世紀,特にアッシュールナツィルパル時代の浮彫は,アッシュール神信に500件以上が知られており,それらの多くは個々に紹介されているものの,基礎資料ッシリアの王たちも競って神殿建設に努めている。神々の祭礼は神殿を中心に行われ,神官たちが活躍あるいは暗躍した。この事柄を考慮に入れると,今のところ次のように推察できる。仰を中心にし,アッシリア的宗教観を背景にして制作されている。2)サルゴン王以降,特に紀元前7世紀の浮彫は,アッシリア的宗教観が弱まった状況を背景にしている。そのため,アッシュール神のシンボルも影をひそめる。以上のことはあくまで推察にすぎず,今後も綿密な資料検討が必要であり,浮彫の図像と宗教史との問題をこれからも研究し,その関連をより明確な形で浮び上がらせるよう努力したいと考えている。(8) 鎌倉時代造像銘記の調査研究〔継続〕研究代表者:東京芸術大学美術学部教授共同研究者:慶応義塾大学文学部教授文化庁文化財保護部美術工芸課技官東京国立博物館研究員調査の目的:日本彫刻史を研究する上でもっとも基礎的な資料となるのが造像銘記である。造像銘記は,その彫刻の造顕理由,発願者,作者,製作年代等を直接的,具体的に示すものであり,あらゆる彫刻史的研究の基礎となる資料である。当研究グループは,かつて平安時代造像銘記に関する資料を網羅的に収集し,その成果を『日本彫刻史基礎資料集成』平安時代造像銘記第8巻(丸尾彰三郎他偏,中央公論美術出版刊,昭和41■46年)として刊行したが,これに続いて鎌倉時代造像銘記資料の収集を完成させ,鎌倉時代彫刻史研究の基礎をつくりたいと考える。この時代の造像銘記を有する作品は既として役立てるにはなお不充分なものが多く,それらの体系的な詳細にわたる資料収集が切望される。本研究は,故丸尾彰三郎によって端緒をつけられたこの期造像銘記資料の収集を引き継ぎ,完成させようとするもので,鎌倉時代彫刻の複雑多岐な史的展開は,この資料収集の完成とその公刊をまって始めて解明されるであろう。水野敬三郎西川新次副島弘道山本勉-83-

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