とd曙≫とがある。両公爵像の顔は共に聖母子像側に向けられているが,特に,¢ジュリマニフイチはd昼≫とq夜≫の上に¢ジュリアーノ≫が置かれ,その公爵の両脇にはり天≫と《地≫の寓意像アーノ≫のプロフィールとも言える程の顔の向きは目立つ。入口側反対には合唱席を最奥にもつ洗礼堂形式の小礼拝堂があり,そこの祭壇は,奥へではなく,入口側の遇聖母子≫方向に置かれている。この礼拝堂のための極めてわずかの予備習作では,両公爵の石棺両脇下に各二体ずつの河神像,公爵像頭上のアッティカの上には甲胄,トロフィ,うずくまる少年像,空位の玉座等が配置される予定であったし,遺聖母子≫像の下には両豪華王ロレンツォ及びジュリアーノの一対の石棺が設置されることになっていた。しかし共和制復活に伴う戦争,』最後の審判≫制作依頼等の種々の事情によって礼拝堂墓碑は未完成に終っている。本報告書ではとりあえず河神像を通して当初の宇宙論の意義を述べる。前述した研究者たちはこれらの河神像にハデス(冥府の国)の四つの河をみた。パノフスキーはそれらに「地下の世界」(ランディーノやピコの著書が典拠)を,四つの寓意像に「地上の世界」をみる。ダンテの「神曲」地獄篇第十四歌では「涙の四つの川」が「地下の世界」を示して,地獄と冥府の国とが同一視されている。河神たちに地誌論的解釈をしてそこに実在のイタリアの川をみるハートと違って,宙論的解釈を要求するのは,両公爵の特異な肖像彫刻の性質である。両公爵像は,肖像彫刻というには実在した両公爵に性格も容貌と全然似ていずに,最初のミケランジェロ字者ともいうべきグリム(6)はむしろ名称が逆になっていると考えた。しかしこの題名はミケランジェロの宇宙論に由来する。彼の覚え書き(casaBuonarroti lOA)にを置く旨が記されている。つまり¢ジュリアーノ≫は肖像彫刻としてよりも天と地との間をさまよう死後の魂の状態が理想化して表現されていることになる。m魂のとどまる場と地上の世界とを区別するのは.石棺と公爵像との間を横切って深い影をおとすコーニスである。建築の内部構成では上層に向う程天上界に近づくことになる。そのためら塔頂から光がさしこむ工夫がなされている。以上のようにこの礼拝堂は,下層から上層へと冥府=河神,地上界=寓意像,死者の魂=公爵像,天上界=ルネット及びドームという図式的な宇宙論を構成することになっていた。ところが現存する礼拝堂には河神像も,そしてルネットの中の壁画もない。しかも上述した宇宙論的構成は直聖母子≫像の位置によって完全に破綻していると言わざるを得-91-
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