(11) インド古代美術におけるグプタ様式の成立と展開研究者:早稲田大学文学部非常勤講師秋山光文調査研究の目的:インド仏教美術のなかで,最も完成度の高いとされるグプタ様式は,中国及び我が国の初期仏教彫刻に重要な影孵を及ぼしたと思われる。しかしながら,グプタ様式成立の過程に関する研究は国際的に見ても充分に考究しつくされているとはいい難い。これまでのところ,仏教美術において所謂「グプタ様式」が完成するのはAD5世紀中頃とみられているが,その母体となったと思われるマトゥラー地方の造像活動について,AD3世紀末から4世紀末に至るポスト・クシャーン時代及び初期グプタ時代の遺例が極めて乏しく,未解決な点が多い。これについてはかねてよりグプタ様式の成立は単一の発展系列によってのみ理解されるべきものではなく,更に複雑な要因の重合によるものであるとの立場からJ.C.Harleらの提唱するポスト・クシャーン期における東マールワー地方の造像活動に注目すると共に,グプタ朝との関わりの大きかった西デカン地方からの影縛を併わせて考察の対象と考えている。この様な多角的な視野からグプタ様式成立の過程を明らかにしたい。研究報告:古代インド彫刻の頂点ともいうべきグプタ様式成立の過程を明らかにするために,これまでに蒐集した資料を整理・分類し,不足分を補うために現地調査を行った。間:昭和59年12月16日〜60年1月20日日程:インド考古局訪問。国立博物館に州立博物館にて調査。館長R.C. Sharma博士と会見同市博物館,大学博物館にて調査。カウシャンビー遺跡訪問州立博物館にて調査。期12月17日〜21日デリー21日〜23日ラクナウ23日〜26日アラハバート27日〜29日マトゥラー-101-
元のページ ../index.html#119