鹿島美術研究 年報第2号
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②聖徳太子厨子絵については,従来秘仏としてほとんど開扉されなかったが,今回寺当局の特別配慮で写真撮影と観察調査することができた。その結果を報告すると厳重秘仏のため,開扉の機会が少く,したがって油煙による汚れも少く,彩色顔料を調査することも十分可能であった。しかし,図様は白土下地ともども彩色が剥落した箇所が諸所にあり板地が露呈している状況であり,図様復元には彩色の剥落箇所に橋を架けるような作業が必要と思われた。こうしたトレース作業は次の機会にまちたい。③堂四面長押上の千体仏,須弥壇上長押の飛天図,格狭間の獅子図の調査撮影は時間的制約のため次に延引した。④後壁表面の九品来迎図については細部を詳細にし,トレースの完全を期した。(後述経過•その2及び付表参照)⑤四天柱壁画については堂壁画のうちいちばん油煙で被覆されており,赤外線写真撮影はほとんど成果なく,専ら赤外線テレビ観察ー遠赤外・シリコンビジョンetcーにより行った。しかし柱面が湾曲していること,表面が油煙により滑脱状を呈していること等により照射光線のハレーションが著しく,極端にいえばちょうなでさらった約8のうち,北西柱,東北柱,南西柱を照射した結果,尊名不詳を交えた次の様な図像が画れていた。く北西柱〉禿頭四臀立像(持物:弓・矢・五鈷杵・岩座に侍立,足下に邪鬼か)。烙髪念怒形立像(二臀,両手を胸前で交又させ,右手に三鈷杵を執る。足下に邪鬼か)。倶利迦羅竜剣。秤迦羅・制多迦二童子各立像。く東北柱〉不動明王立像(右手剣,左手索・岩座侍立)。孔雀に騎乗せる天部形(右手三鈷把剣,左手宝珠か)。禿頭人物(法鉢形。手に独鈷杵か)。老婆風人物(手に桃又はザクロ)。逆手に三鈷杵とる童子。ほかに人物2。く南西柱〉十羅刹女像。ほか菩薩坐像(普賢か,合掌手,蓮華座),三面三眼夜又神(阿修羅形,日月執る),武装神,鬼神など南西柱すべてで18尊。く東南柱〉詳細調査はできなかったが,菩薩形数謳が画れているらしく,うち1謳は南西柱との対比で文殊坐像かと思われた。研究経過ーその2天平宝字7年(763),中将姫蓮糸織成伝説をもつ国宝本綴織当麻曼荼羅図(奈良時代■9 cm四方の平面状だけが鮮明に映像されるといった有様であった。それでも四天柱-l12-ー付表1,2参照一

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