萬福寺の伝来作品で,陳賢の「観音帖」の名で呼ばれている画帖がある。明末の陳賢筆の将来作品で,隠元の著賛がある。<統本淡彩観音図>として,昭和52年重要文化財に指定された。本作品は毎日新聞社刊の『解説版・新指定重要文化財・絵画II』に収録され,その解説に釈文が記されているが,賛文は草体で詩形が様々であり,明末中国僧のものでもあるため十分読まれていないきらいがある。しかしこの賛文は,隠元の『隠元禅師普門草録』の「観音賛26首」及び『黄槃和尚扶桑語録』巻14の題賛中の「観音25首」中に編録されており,これを参照することにより釈文は容易である。なお著賛の時期についても,この語録の編集年次から,隠元の普門寺時代である明暦2年(1656年)より万治3年(1660年)の間とすることができる。また本画帖は現在18図であるが,当初は数が多かったものと思われ,また配列の順序についても疑問が持たれるが,この復元についても資料を提供するものと考えられる。-142-
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