鹿島美術研究 年報第2号
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(19) オランダ19• 20世紀における絵画,彫刻,工芸,建築の研究(中間報告)Berlage)そしてDeStijlのグループ(Mondriaan,Theo van Doesburg等)その他,Van Gogh, jan Verkade M. de Klerkらを研究対象とする。19世紀以来の芸術雑誌も研究者:大阪大学文学部修士課程調査研究の目的:自らを非文化的民族と称し,芸術の社会的役割に強い関心を寄せるオランダにおいて,19世紀的カルヴィニスト的社会から20世紀の多元的,多イデオロギー的社会への変化とともに,芸術がどのような歩みを示したかを研究するのが本調査の目的である。調査の性格上,絵画,彫刻,建築都市計画,芸術批評全てを研究範囲とし,具体的にはハーグ派の画家,中世主義及び綜合芸術(A.Derkinderen, Roland Holst, Cuypers, オランダ独自の芸術及び芸術家概念理解のための不可欠な研究対象であり,各作家,各グループを社会的コンテクストの中に位置づけるための重要な資料となる。研究範囲が広いため抱括的研究としての成果を得るまでにはまだ年月を要するが,本年度の課題は今後のための個別研究の集積と基礎調査である。研究報オランダの19,20世紀芸術は,ファン・ゴッホ,モンドリアンら国際的に研究者の多いごく一部の作家を除くと,まだまだ研究余地の多い未開拓な分野であり,近年,展覧会の形で次々と新しい資料が紹介されているのが,現状である。しかし,底本となるべき通史が今だない現時点においても,オランダ近代芸術が非常に興味深い特質を持っていることは強く感じられる。この特質を充分理解することなしには,ファン・ゴッホ,モンドリアン,ファン・ドゥースプルフら国際的に重要な位置を占める作家を正しく評価することは,非常に難しいであろう。オランダ近代の持つ特色のひとつは,芸術家自身による極めて強い「社会的」意識である。より正確に言えば,芸術を核に社会を有機的に総合しようという一種のユートピア志向である。世紀末においてはGemeenschapskunst(共同体芸術)を唱えたA.デルキンデルンらの画家,建築家ペルラーヘらが中世的社会をモデルにしながら芸術と社会とを有機的に統合しようとし,このような精神的態度は後のデ・ステイルの芸術家達においても明確な形で現われることになる。社会へのはたらきかけという点においてこれらの芸術家達とは一見無縁に見えるファン・ゴッホも,デ・ステイルのグループを抜けたモンドリアンも,この伝統と決して無縁ではない。極めて個人的,ュ閲府寺司-147-

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