鹿島美術研究 年報第2号
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② 鋳造の問題2)鋳造家3)鋳造の質4)作品からの型取り鋳造について1)署名マーク彫刻家の署名A. Rodinの頭文字Aが,比較的古いものはA.の形をしている。しかし具体的年代をあげることはできない。当館作品の多くのものに,内側に⑱のレリーフ状マークが見つかったが,これはロダン美術館所蔵のものにはない。あるいは松方幸次郎の注文によって作られたことを示すマークであるかもしれない。また同じく内側にIA. Rodin iのレリーフ状マークがあるが,これはロダン美術館が開館した1919年以降,館の指示によって鋳造したものであることを示す。ロダンはリュディエ(Rudier)を鋳造家として使っていたが,署名の多く見られるアレクシス・リュディエ(AlexisRudier)の名の下に,アレクシス本人以外に息子ウジェーヌ(Eugene)も制作していた。それはアレクシスの死(1897年)以後のことである。ウジェーヌの甥ジョルジュ(Georges)は自らの署名を用いている。松方コレクションの作品は,非常に良い鋳造のものから,あまり良くないものまで,かなりばらつきがある。良いものは一般に軽く,微妙なモデリングがでていて,内部の仕上げもていねいである。またパティナ(仕上げ塗料)も良い。非常に良い作品としては,<からみあうバッカントたち>(S.59-3),<立てるフォーネス>(S. 59-19),<姉と弟>(s.59-21),<ジェフロワの胸像>(S. 第一鋳造は価値の高いもので,明らかにそれであるとわかるものもある。<星空>(S.59-12),<立てるフォーネス>,<髪に花を飾る少女>(S. 59-29), <ォルフェウス>(S. 59-37),<ロッシュフォールの胸像>(s. 59-48)など。またブロンズ作品の中に,プロンズや大理石の完成作から型を取って鋳造し59-24),<ネレイデス>(S. 59-35),<考える人>(S. 59-40)などがあり,あまり良くないものとしては<花子のマスク>(S.59-25),<花子の頭部>(s.59-26)などがある。-154-

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