鹿島美術研究 年報第2号
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年2回,水圧の強い水道水のみで,洗剤を使わずにスポンジで洗浄する。パティナ5)構造上の問題③ 展覧会歴の問題④ 展示上の問題III.保存,修復についてのアドヴァイスたものがある。たとえば<オケアノスの娘たち>(S.59-36)は大理石作品から型を取って鋳造したものと思われるし,<ェヴァ>はコペンハーゲンにある石灰石作品から型を取ったものである。また<嘆きの獅子>(S.59-31)は石背原型から再び取った石音である。このような作品からの型取りは,型そのものが甘くなるので,一般に仕上りは良くない。プロンズ作品の各鋳造部分をつなぐ鋳接ぎなどの様々な方法については,とくにそれで年代等がわかるわけではないが,当館の作品に使われている方法について,ロダン美術館に資料としで情報を提供した。彫刻の内側を調査した際,様々なラベルが見つかった。これは展覧会等に出品した際のラベルである場合が多い。主に第二次大戦後,西洋美術館開館以前,ヨーロッパでの展覧会に出品された時のものである。数字のラベルだけのもの,美術館名のあるものなどがある。例えば,IKunsthalle Basel No 1181 1 (バーゼル美術館)といったもの。これは該当の美術館に問あわせて,カタログ等とつきあわせ,展覧会のデータとなりうる。台座などは,ロダンが生前に選んだ台座と同じものを使うことが望ましいが,幾つかの作品においてその示唆を得た。彫刻の保存,修復については,絵画などよりもはるかに簡単であるが,戸外の作品のばあいには,雨や大気汚染の問題があって難しい。ロダン美術館では,彫刻はの傷みについては,これを全部とり除いて新しいものをかけるのが望ましい。特に<地獄の門>については,ロダン美術館が1983年に修復を行ったので,その修復記録を送って頂く約束をした。ロダン美術館作品では,接続用金具に鉄材(当館も同様)を用いていたのでこれに錆が生じ,全体の重みに耐えるのが困難になったので,これをブロンズと取替えた。細かい亀裂を埋め,全体のパティナを取除いて新しいものをかけ,雨がたまらないよう,排水溝をもうけた。以上がロダン美術館の修復の概要である。当館の<地獄の門>も同様の修復が必要となるため,修復記録の到-155-

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