鹿島美術研究 年報第2号
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(イ)研究者の海外派遣IV.今後の研究課題着を待って,検討する予定である。なお当館で作成した四分の一実測図のコピーを差し上げることになった。松方コレクションのロダン作品が,どのような形で発註され,いつ鋳造されたのかはいまだにわかっていない。しかしローラン女史が最近知りえた資料で,フランス国立美術館連合の行政部門に,松方関係の資料があるということなので,女史にその後の調査を依頼した。またルーヴル美術館資料室に,ロダン美術館初代館長レオンス・ベネディットの書簡がかなり残されているということなので,高橋研究員を中心にそれらの調査を行う。今回の調査で,作品は1917年以降(すなわちロダン歿後),1920年代はじめ頃に鋳造されたという感触を得たが,作品そのものの調査ではそこまで推定するのは困難だということがわかった。むしろ文献資料による裏づけによって,その間題にアプローチしてゆく必要があろう。作品そのものの調査の結果は,ローラン女史がロダン美術館にその結果を持ち帰って検討を加える必要があるので,しばらく資料の整理に時間を要することになろう。(1) エジプト壁画に関する調査研究研究者:早稲田大学文学部講師調査研究の目的:早稲田大学古代エジプト調査委員会派遣の考古学調査隊が1973年以来5年間にわたってマルカタ南(ルクソール西岸)遺跡「魚の丘」出土の200点以上の彩壁画片の復元を行うために,同時期(アメンヘテプ3世時代,BC1400年頃)の貴族の墓を調査し,その内部の壁面に描かれている,壁画のモチーフから復元の構成を作るための調査をすることが今回の最大の目的である。研究報告:(1) はじめに既に提出したスケジュールに沿って研究を開始した。①手持ちの彩壁画片のうち今回の研究の対象となるもの103点を選びだし写真撮影し,作図した。②それ等をモ村作治-156

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