鹿島美術研究 年報第2号
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とVTR収録を行ったが,このレポートにはその一部を添附する。(III) 139号墓(9) 王の前に旗を立てて同席している被葬者。王に外国からの贈り物を捧げている図。王の前に整列する馬に乗った兵士と,その下にいるシリアの捕われた兵士。被葬者はパイリといい(ふブQ<;;)'アメンヘテプ3世治世時の,アメン神の所領の統轄者。墳墓型式としては前室が奥に長い長方形をしており,奥室が前室の形をしている変型墳墓。前室には何も描かれてなく,奥室の北側の3面にがかかれている。(1) 被葬者とその家族が供物を受けている。(2) 大部分は盗難にあっているが,被葬者の息子プタハモシィがパピルスとともに描かれている。(3) アモ神への宴会を被葬者とその妻に対して息子たちが催している。供物のリスト。口開けの儀式がアメン神官によって行われている。(4) オシリス神に対して数々の供物を供している。葬式を行っている図。(5) 奥へ通じる扉の上部には,スメニクカラー王の治世3年目の儀式について,ヒエラティック(神官文字)で書かれている。(6) 宴会の図,2人の女性とその娘が被葬者とその妻に供物を差し出している。被葬者への供物リストが書かれている。以上が今回調査した3つの墓についての調査内容である。数多くのスライド(3)結語今回は以上の3基の墳墓の調査を行ったが,マルカタ魚の丘遺跡出土の彩壁画片のモチーフ復元のための情報収集には大きく寄与した。現在一般公開されている墳墓は約20基にすぎず,壁画の残存が良好な約400基の5'セぐ:卜でしかないわけで,研究者にとっては苦しい状態である。400基の墳墓のうちアメンヘテプ3世代のもの47基,その以前のもの(トトメス4世代)13基が今後とも調査の対象となる。墓内壁画のモチーフ研究の第1の目的は,魚の丘出土の彩壁画片復元のためであるが,それとともに,アメンヘテプ3世代の古代エジプト人の生活復元もある。第3には,墳墓内装飾と建築装飾の比較及び関連性をみること,第4には,古代エジプトの装飾論の展開である。160-

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