場合には,メタ・クリティシズムとなる。従来,ヨーロッパ系の美学,芸術哲学を偏重するきらいがないでもないわれわれにとって,これらの研究発表を集中的に聞きえたことは今後の大きな反省の材料となった。この分析美学は,一般に芸術とは本質的に何かという質問から,芸術とはいかに使用されているかという質問への移行として特徴づけられるという。今大会ではまた比較芸術学,美学的研究も大いに注目を惹いたが,それもこうした意識あるいは関心を反映してのことであろう。中国,韓国の美学者,それに私も含めての芸術における洋の東西の論究に加えて,ナイジェリアの研究者によるアフリカ美術についての比較芸術学的研究の発表もなされたが,これもかつてなかったものだけに極めて示唆的であったといえる。この種の研究についての要望と関心は今後もますます強まるであろう。大会期間中,モントリオール美術館で開催中のブーグロー展招待とレセプション,観劇,ケベック州文学会との交流と盛りだくさんの行事が予定されていた。また15日には各国の代表的美学芸術学雑誌("Journalof Aesthetics and Art Criticism" -U. その沿革,最近の活動状況などについての情報の交換がなされた。司会はアメリカのJ.フィッシャー氏であった。日本の「美学」の現状については,美学会を代表して出席の吉岡健二郎京大教授による説明がなされた。最終日には,国際美学会会長の改選が行われ,今道友信氏(放送大教授,前東大教授)が選出された。この派遺によって発表した研究発表題目と要旨0水墨画の芸術作品としての存在様式について水墨山水画は東洋的精神を表現する代表的芸術である。謝赫は画六法においてその本質を気韻生動として特質づけている。19世紀ヨーロッパの風景画,とくにドイツ・ロマン派の風景画のうちにこれと相似する靱きを感じる。その空間表現はまた現代アメリカの抽象表現主義のオール・オーヴァな画面にも通じるものである。本論はこれらの絵画の比較を通じてその根底にある有限と無限の把握をめぐって東西の自然観の決定的な相違を指摘する。更に西田哲学の「場」の理論によりつつヨーロッパ的芸術論文及び報告書名・講演題目:S. A-"Revista de Estetica" -Venezuela-British Journal of Aesthetics" -England-Revue d'esthetique-France-"Stadie Estetyczne" -Poland-"Chinese Journal of Aesthetics-" china-『美学』一日本一)の編集者会議(公開)が行われ,-167-
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