5.米国等における文化財保存科学の動向1)スミソニアン博物館支援センターるSilverHillに自然史博物館,アメリカ歴史博物館の収蔵施設と研究室,保存Smithsonian's Museum Support Center)の建築面積30800m2の建物が完成し,30kmの所に広大な敷地を得られるという土地の広さは,われわれにとって羨望イデアに惜しみない賛辞を贈ってくれたのも忘れられない。スミソニアン所属の博物館が,所蔵する収蔵品の増加によって,既設施設が手狭となってきたので,ワシントン特別市の南東に車で約25■30分の距離にあ科学部,保存科学研究部がすでに移転していたので見学する機会を得た。保存科学部長には,ポスルス・ウェイト氏がボストンから2■ 3日前に着任したところであった。保存科学部は,本センター内で2383m2(東博東洋館展示棟の建築面積に匹敵する)の面積を占め,織物,紙,家具,絵画の保存修復実ソニアン所属の博物館収蔵品の保存と修復に貢献するデーターを作成することにある。この他に,自然史博物館の人類学部門にも保存科学研究室があり,ここでは標本が検査,登録,クリーニング,写真撮影され収蔵庫に収められる。アメリカ歴史博物館は,約200m2の保存施設があり,そこで修復家が18世紀の楽器,羊皮紙古文書,古代ガラス容器等広範囲の文化財の処理を行う。聞くところによれば,スミソニアン博物館支援センターの構想は,20年前に提出され,1981年1月から1983年3月にかけて総工費5000万ドルを費して完成しているのに,目を見張らずにはいられなかった。また,ワシントン特別市の中心から,わずかの的である。これだけの底力を有する米国に対して,わが国の文化財保存科学が互角に研究を進めるには,どんな方法があるのかという思いがいつまでも筆者の脳裏を離れないのである。2)カナダ保存科学研究所カナダ保存科学研究所の保存科学部は,3つの研究室と25人の保存科学者によって構成されている。すなわち,(1)環境と劣化研究室は,文化財に有害な環境因子の測定方法や防除方法を研究し,(2)保存工程研究室は,考古遺物や美術情報サービス等を含むスミソニアン博物館支援センター(TheX線分析室,保存科学研修用講義室等が配置されている。仕事は,スミ-182
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