(1) 未発掘古墳の微生物制御因子(3) 紙質類文化財の保存に関する微生物学的研究ーフォクシングからのカビの分離6.おわりに第6回国際生物劣化シンポジウムで研究発表品の新しい処理方法の仕称の作成並びに評価を行い,(3)分析研究室は,美術品等を構成している材質や変壊生成物を分析する新しい方法を開発し,分析結果を提供することを目的としている。さらに,考古,民俗,美術,彩色彫刻,家具,紙,染織の保存修復を実施する専門のアトリエが配置され,それぞれのアトリエはいずれも数名の修復技術者で構成されていた。したがって,カナダ保存科学研究所は,研究者,修復技術者その他で100名前後の陣容であった。欧米の文化財の保存と修復の研究機関は,保存科学の研究部門だけでなく,修復技術者を擁するアトリエを併設している。これは,各種の修復を実施する過程で,科学者と修復技術者が密接な連携をとり,より多くの情報をとり出そうという姿勢の現れであろう。研究費,施設,設備,人員のいずれの点からも圧倒された海外研修であった。わが国の文化財保存科学の研究は,この彼我の差を十分認識した上で,どのように展開して世界の水準を保ち続けるかがわれわれに課せられているように思われた。しかし,単なる精神的高揚のみで太刀打ちできるものではなく,予算,人員,設備等の裏付けが必須の条件であることは,あらためて言うまでもないであろう。鹿島美術財団の援助による今回の米国及びカナダの海外研修旅行から,何ものにも変えられぬ多大の収獲を得たと信じている。これらの成果を今後の研究に反映させ,わが国美術品の保存と修復に努力したいと思っております。この派遣によって発表した著書,論文及び報告書名・講演題目:(2) 文化財保存科学における生物学的研究ポール・ゲッティ保存科学研究所・スミソニアン博物館支援センター保存科学部カナダ保存科学研究所について一・国立美術館・スミソニアン保存科学部・現代美術館以上-183
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