鹿島美術研究 年報第2号
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15.黄壁語録における美術史関係史料の調査研究(継続)16.日本南画における「真景」の問題について17.京都洋画壇におけるフランス・アカデミズムの移入と展開概研究者:京都府立鴨祈高校教諭大槻幹郎概要黄槃山万福寺に伝存されている膨大な資料のうち主として近世美術史の研究に資することの大きい関係諸資料の集成をはかっているが,59年度の助成により渡来僧の語録関係の資料を網羅,撮影あるいはコピーする作業は完了した。引き続き残る和僧90名分の語録関係及び本山収蔵の諸記録などを中心にする調査と分類を行い,関係美術史諸資料の全貌を明らかにしたい。研究者:宮城県立美術館学芸部長酒井哲郎南画における真景の問題を実作と画論の両面から検討を加え,さらに他の山水図との関連において考察し,江戸後期南画における真景図及び真景論の位相とその構造について考察したい。ー鹿子木孟郎を中心として一研究代表者:京都国立近代美術館主任研究員島田康寛共同研究者:加藤類概要明治37年に京郡に移住した鹿子木孟郎によってジャン・ポール・ローランス系のフランス・アカデミズムがもたらされ,堅固な写実主義絵画の画系が生まれた。それは関西美術院,アカデミー鹿子木等における後進の育成によって示されるが,大正から昭和にかけヨーロッパ新思潮の流入によって影がうすくなる。しかし,西欧的リアリズムの伝統を持たなかったわが国において,フランス・アカデミズムの習得こそ重要な問題であったわけで,従来日本洋画の弱体が説かれて来たのはこのことに由来する。そうしたことを考える時,鹿子木孟郎の写実主義の主張とその芸術は,再び新しい角度から検討されるべき美術史の課題である。幸い鹿子木氏の遺族の下に数百点に及ぶ作品や資料が残されており,これらを調査整理し,鹿子木美術の全容を明-37-

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