鹿島美術研究 年報第2号
77/220

(3)林忠正宛書簡の研究またいで,マニエリスムから自然主義へという流れの橋渡しをすることになる。福井県立美術館にあるホルツィウスの銅版画は次の通りである。1.《イクシオン》1588年これらは,ホルツィウス独特のふくれあがるような彫版技法を駆使したスプランガ一様式から,1590■91年のイタリア旅行を経て,次第に古典に回帰してゆく流れを伝えており,ことに2,3, 4はエングレーヴィングとしては極めて大作であり,迫力に満ちている。この他,アフター・ホルツィウスとして,ヤン・サーンレダム(ca1565■1607) 彫版になる《秋》(H.X珊91)と〈サマリアの女》(H.X珊36)‘が含まれている。その他,コック,ボス,ブリューゲルなどの興味深い版画があるが,これらの紹介については別の機会にゆずる。研究代表者:東京国立文化財研究所美術部研究室長―輪英夫共同研究者:東京国立文化財研究所主任研究官国立西洋美術館研究員東京国立文化財研究所研究員国立西洋美術館研究員調査研究の目的:急速に活発化し多くの研究が世に出た。これにより当時のジャポニスムの担い手たちの活動が次第に明るみにでており,これらの研究に登場する人々は,林忠正に書簡を送った人々と多く一致している。従って,当研究グループは林忠正宛書簡資料を一括所有する側として,今後のジャポニスム研究をさらに深化し推進するために,早急にこれを研究し刊行する義務を負っている。2.〈ミダスの審判》1590年3.〈御訪問》1593年4.〈三王礼拝》1593年5.《ピラトの前のキリスト》1596年6.〈キリストの笞打ち》1597年-19世紀末から20世紀初頭における一画商の活動の軌跡一19世紀からヨーロッパで流行したジャポニスムに対する関心は,1970年代にはいり米倉迪夫馬渕明子鈴木広之高橋明也59

元のページ  ../index.html#77

このブックを見る