19世紀後半から20世紀初頭におけるジャポニスムに対する関心は,1970年代にはい"Philippe Burty and a Critical Assessment of Early Japonisme", Segi Shinichi "Hayashi Tadamasa ; Bridge Between the Fine Arts of East and West" in 上記のことから,本研究では全宛書簡を解読し,内容の検討及び周辺資料の調査研究を行うことにより,ジャポニスムの担い手たちの日本美術に対する関心のあり方,及び林忠正のジャポニスムとの関わり方を具体的に明らかにすることを目的とするものである。研究報り急速に活発化し,多くの新しい研究が公表された。これによって当時のジャポニスムの担い手たちの活動が次第に明るみに出ているが,これらの研究(GabrielWeisberg 場する人々の多くは,当時の日本人美術商林忠正(1853-1906)とかかわりをもっている。本研究は,この林忠正がパリ滞在中,彼の顧客や友人から受けとった約650通の書簡(東京国立文化財研究所蔵)を対象にしている。これらの宛書簡の概要については,すでに共同研究者の1人である馬渕明子の紹介(「林忠正の未刊行書簡について」一『ジャポニスムの時代』昭和58年)で明らかなように,当時のジャポニスムの主要な担い手たち,コレクター,外交官,美術館関係者,芸術家ら著名な人々を含み,今後のジャポニスム研究上最も基礎的かつ重要な資料となりうるものである。従って,本研究ではこれらの宛書簡を読み下し,内容の検討及び周辺資料の調査を行うことにより,具体的な事実を確認するとともに,ジャポニスムにかかわる林忠正の活動全般を明らかにすることを第1の目的とし,本年度は以下の調査研究を行った。<宛書簡の研究〉①アンリ・ヴェヴェール書簡パリ装飾美術館助手,イヴリーヌ・ポセメ女史の協力により,1893年から1906年までの全書簡48通がタイプ打ちされ,読解可能となった。それにより次のことが分かった。・ヴェヴェールが林から購入していた品物は,浮世絵版画・切手・小卓・根付・掛物・陶磁器・金属品(小柄・等他)など極めて多岐に及ぶ。・日本美術の愛好家らが集まって行われていたdinerjaponais(日本風夕食会)の初~ Tokyo 1980. Klaus Berger~ Mtinchen 1980等)に登-60-
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