(4) フランス新古典主義美術研究DESTAMPES JAPONAISES DE CLAUDE MONET>ーパリ,1984ー,ミーチ・Museum of Art"等により林所蔵作品の移動について幾つか確認できた。また,宛書ペカリック女史論文“EarlyCollections of Japanese Prints and The Metropolitan 簡全点を1通づつファイル化し年度順に整理し,それらの写真撮影も行い整理した。以上,本年度の調査研究は宛書簡の読み下しとタイプ打ち,解説と内容の検討及び周辺資料の調査研究を中心に行った。本研究は2年継続で計画されたものであり,60年度も継続して鹿島美術財団の助成を受け,引続き今年度の作業を進行していく予定である。しかし,研究の過程で本書簡が片道のものであることを痛切に感じさせられている。とくに,本書簡にはパリ以外の画商,古美術商からのものが多く含まれ,これらの人々の当時の活動の実態が殆んど分らない現状である。また,当事者のみが了解している事柄や,当時の人物,固有名詞が多く出てくるため,なお詳細な調査が必要である。これらのことから,今後は国内での調査研究と併行して,‘宛書簡主の現地へ直接赴き,書簡の内容からすると相当日本の美術品に詳しかったと考えられる彼らの活動を探ることが,本書簡の内容を深く理解する上で不可欠なことである。ーナポレオン関係美術の研究一研究者:明治学院大学文学部講師鈴木杜幾子調査研究の目的:フランスの新古典主義美術とロマン主義美術は,形式的・視覚的な面においては,ヴェルフリンの主張した古典主義美術とバロック美術の対照に対応する顕著な対立的性格を示しているため,従来の美術史学においてはともすれば互いに相容れぬ二潮流と考えられがちであった。だが,近年の研究者たちはこの二つの様式の主として非形式的側面に多くの本質的共通点を見出すようになった。すなわち,新古典主義はその古典古代への憧憬によって「過去への耽溺」を行ったロマン主義の一変種であるともいえるし,また王政復古期にロマン主義が台頭してのちも,新古典主義美術はアカデミズム陣営を中心に存続したともいうことができ,この二様式の相互浸透は美術史の様々な局面において指摘することが可能である。以上のような研究史的状況においてナポレオン関係美術という具体的に限定された-63-
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