(6) フェノロサ,芳崖の革新的日本画団体「鑑画会」における作品作家に関する調査研究研究代表者:東京国立文化財研究所研究員佐藤道調査研究の目的:フェノロサが明治前期の日本で新しい日本画の創造運動の拠点とした鑑画会の活動内容については,昭和16年小高根太郎氏「アーチスト・フェノロサの美術運動」(美術研究110-112)により文献資料からの詳細な研究が為された。しかしその後,その出品作家や作品に対する具体的な調査は狩野芳崖等一部の作家と作品を除いて全く手つかずの状態である。近年フェノロサ学会が設立され,研究者によりフェノロサの日本での活動が美術のみならず宗教,文学等も含めた多角的かつ総合的な研究が進められつつある。美術に関しても鑑画会活動に関する実作品からのリサーチが急務の課題となっている。本研究はこうした作家に関する資料収集をもとに履歴の作成,作品の所在写真資料の収集につとめ,東京美術学校,日本美術院へと連なる日本画近代化の第一段階の実態を明らかにしようとするものである。研究報告:フェノロサが明治前期の日本において新しい日本画創造の場とした鑑画会の活動については,昭和16年小高根太郎氏「アーネスト・フェノロサの美術運動」(美術研究110-112)により詳細な文献資料からの追跡が為された。それに記された明治18年の第1回,翌年の第2回鑑画会大会の各1等から4等までの受貨作品の中で,現在その絵と所在が確認できるものはわずかに狩野芳崖筆仁王図(第2回大会1等)ひとつにすぎない。その他は出品作品の内容はおろか,画家の略歴さえつまびらかでないものも少なくない。近年『狩野派の絵画』展(東京国立博物館)『ボストン美術館名品』展(同)等でボストン美術館所蔵の芳崖,橋本雅邦,木村立嶽らの作品が紹介され,西洋絵画と東洋絵画との極めて折衷的な画風から,鑑画会との関係が強く示唆されていた。本研究代表者佐藤は,その後昨年9月より米国出張となったため,米国内に所蔵される鑑画会関連作品の調査とフェノロサの来日の背景ともなっている19世紀後半のアメリカにおけるジャポニスムに関する資料収集につとめることとし,山梨が国内作品の資料収集,出品作家に関する文献調査に当たった。以下その成果として報告するものである。ボストン美術館に所蔵される膨大な量の日本美術のコレクションが,フェノロサと同上山梨絵美子-105-
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