めこの名がついているが,売却の際,極くフェノロサが身近に置いて親しんでいた絵は手元に残していた。その遺愛品をフェノロサの孫にあたるMrs.Moncure Biddleが寄贈したのがフィラデルフィア美術館のコレクションである。またフリア美術館の作品は,フェノロサが生存中,フリアに譲渡したものである。こうした経緯からすれば,これらのコレクションに鑑画会関係作品が含まれている可能性はかなり高いと言えよう。冒頭に述べた唯一鑑画会出品作として現在所在の知れる芳崖筆《仁王捉鬼図》も,当初アメリカに渡った後日本に再び請来されたものであり,或いはかなりの鑑画会関係作品がアメリカに渡ったものかもしれない。今回確認できた作品は,必ずしも鑑画会との関係を指摘することができるものばかりではないか,次に興味深い作品を幾つかあげてみたい。ボストン美術館所蔵の芳崖筆爺間雄飛図,フィラデルフィア美術館蔵同筆飛龍戯児図は既に日本にも紹介され,いずれも跛法による筆力を抑え立体感を効かせた力作であるが,これらはそれぞれ第1回大会出品群笠図,第2回大会双龍図(旧作)との比定を示唆されている作品である。芳崖の作品ではこのほか江流百里図,鐘旭図,新出の山水画帖(共にボストン美術館)等を実見したが,これらは出品歴は全く不明ながら,その絵画理論は鑑画会との関係を濃厚に窺わせる。橋本雅邦の作品は比較的多く残っている。最も注目すべきは,ボストン美術館の騎龍弁天国,雪景山水屏風,山水図,フィラデルフィア美術館の毘沙門天図,山水図,フリア美術館の達磨図,寒山拾得図である。これらはいずれも極めて深い陰影の立体感が表出されており,その多くは同じ重郭朱文方印「稚邦」が捺されている。これらのコレクションには雅邦の後年の作品も蔵されているが,芳崖や木村立嶽らが既に没した明治20年代後半からは雅邦の画風も明らかに異なって〈るため,上記の作品はほぼ鑑画会時代から明治20年代前半と見て間違いない。雅邦は第1回鑑画会大会に山駅秋色(3等),毘沙門天の2図,第2回大会には辮天(2等),雪景山水屏風,山水小幅,旧作という山水数幅,また第2回大会直後の例会に釈迦,羅漢,山水を出品している。残念ながらこれも比定の決め手を欠くものの,同画題を扱っているボストン術館の騎龍弁天図,雪景山水屏風,フィラデルフィア美術館の毘沙門天図は,鑑画会出品作との関係において極めて興味深い作品と言えよう。木村立嶽の作品は,既に日本にも紹介され,水墨山水と西洋絵画の立体感・光線表現との折衷で反縛を呼んだ雪景山水図,巌間望月図がポストン美術館にあり,また同107-
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