などが導き出される事になる。本調査研究は,初期洋風画の中でも主に世俗画(西洋風俗図,王侯図,戦闘図等)の新出・再発見の資料の原図となった版画を探索,調査し,基本的データを提出して,初期洋風画研究の一層の発展に資する事を目的とする。研究報1.調査の期間,場所昭和60年9月19日〜10月5日……パリ,国立図書館版画室(Cabinetdes Estampes, パリ国立図書館,プリュッセル王立図書館の各版画室に於いて,16世紀中頃〜17世紀初期のフランドル製版画を閲覧,調査した。調査中は初期洋風画の画集を常に机上に置き,その図像の源泉となりうる作品は寸法,データを取って,ネガのあるものは焼増を,無いものは新しく写真撮影を依頼した。帰国後郵送された40枚のモノクロ真は現在上智大学キリシタン文庫に保管されている。閲覧した版画家としては,限られた日数なのでウィリックス,クリスパン・ド・パッス,サドレル,ガル,コルト,コラールトらに絞り,テーマ別分類からは肖像と古代帝王図集を選んだ。期間中フォリオの大版で約60冊と,箱入りで10箱以上,詳しく数えられないが,何千枚かの大量の版画を効果的に調査し,しかも細部まで熟覧できた経験は何ものにも替え難かった。なお閲覧調査の方向付けには,坂本満お茶の水女子大学教授の,閲覧方法については岩井瑞枝女史のご忠告をいただいた。またパリとブリュッセルの版画室では,それぞれコンセルヴァトゥールのプレオー氏とヴァルク女史の懇切なるご指導をいただいた。ここに記して感謝の意を表したい。閲覧調査の結果,新たに日本初期洋風画の源泉となった可能性のあるフランドル製版画を,特定の洋風画の作品別に例挙する。昨年再発見され,本年度中に公のコレクションに入る注目すべき作品。今回の調査旅行の最重要課題である。元来は六曲一双の屏風だが,今は十二枚のめくりとBibliothさqueN ationale, Paris) 10月7日〜11日……プリュッセル,王立アルベールI世図書館版画室(Cabinetdes Estampes, BibliothさqueRoyale Albert ler, Bruxelles) 10月13日〜17日……アムステルダム,国立美術館(Rijksmuseum, Amsterdom) 2.調査の方法と対象3.調査の結果A.<十二帝王図>……山形の小沢家旧蔵品で戦後焼失したものとされて来たが,-110-
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