偶・歌・題讃•仏事・銘・引・記・序・文・蚊である。また『黄槃木庵禅師全録』一(9) 黄槃語録における美術史関係史料の調査研究(継続)研究者:京都府立鴨祈高校教諭大槻幹郎調査研究の目的:中国明末の渡来僧隠元を開祖とする黄槃宗には,隠元以下木庵・即非など五十余人に及ぶ渡来僧があり,この会下に多くの日本僧が集中した。安永元年(1772)の隠元百年忌の時点で『黄槃宗鑑録』に登載された嗣法者の数だけでも二千九百八十四名を数える。またこの間が黄槃語録の編録が多く行われた時期でもある。隠元以下渡来僧の多くは,すぐれて詩文・書画・策刻・文房趣味など中国禅院の文人趣味を体した僧が多く,日本僧にもまたこれに傲う者が多くあった。ここに内容豊かな語録詩文集の編録を多くみることとなる。またその内容も豊かな文人的性格を見るものが多い。これらは近世美術史研究の史料として看過できないものと考える。ここにその調査研究をもとに,関係史料の集成を期するものである。研究報告:黄槃禅語録を美術史史料としての観点からみる場合,その範囲をどのように考えるかは研究の方向,また目的によって限定の仕方は異なるであろう。場合によっては語録全体が,その画僧の表現体として史料的意味を持ち得ることもあり,また極度に限定すれば,ある作者や作品に関して直接かかわりのある部分のみが史料としての価値を有するものでもある。しかしここでは美術史一般の立場から,かなり広く各分野の史料的有効性を考えながら,ほぼ後述のような内容に限定してその収録を考えた。まず対象となる語録の形式であるが,開山隠元・ニ代木庵の語録のうちからその代表的なものについてみると次のようである。『黄架和尚全録』十八巻の場合,各寺院入院中の語録,即ち上堂法語・小参・源流頌・頌古・拮古・行実・入室・機縁・法語・答垂語・啓・書・詩偶.賛・小佛事・記・雑著。『普照国師広録』三十巻の場合は,各寺語録・小恭・入室・機縁・法語・頌古・拮古・代古・源流頌・行実・啓・書間・詩十巻は,上堂・小参・乗払・普説・答問・機縁・枯古・頌古・源流頌・法語・行実・佛祖讃・諸祖讃・自讃・1易頌・詩偶・古体・歌・書啓・雑録・雑題・銘・引・序・記・跛・文・小佛事である。これらが黄槃語録の典型となるものであるが,しかしこれらは大部なもので最も備した形式で,多くは省略される場合が多い。このうち法語あたりまでが本来の語録-117-
元のページ ../index.html#135