8.書・書間。これは尺謄である。例えば隠元録の「復幻寄逸然上座」,雲谷等輿への9.詩偶。この内容は多様で,隠元録の「示狩野安信」や「益信釆女脹望夜参謁井饗10.記・題・序・賊等。これは雑著・雑集としてまとめられる場合もあるが,豊富なに美術史料として校刊されているが,また別本の存在を知り得た。大部な年譜の中には,作者作品名など年記を伴っているので史料として貴重であり,部分を抄出した。「復長門雲谷信士」のように,その僧侶との交渉関係を示すもので,画僧・画人・文化人に対するものを挙げた。松為供以偽示之」のように示偽として与えたもの,「寄探幽信士過訪不遂」のように狩野探幽が摂津冨田の普門寺に隠元を訪ねたが会えなかったため贈った偶,悟心元明の「秋日与木世粛t乏舟遊墨江」や「送池貸成之東都」・「送鶴亭禅友遊東都三首」といったもの,また「題鶴亭花鳥驚」・「題赤壁図」・「題驚」など画賛までを含む。なお詩偶には「序」・「引」文を伴うものがあり,かなり詳しい状況を知り得るものがある。なお年記を伴うものもあり,それ自身に年記がなくても年次を追って編録されるものが多く,前後の関係からその年代をおさえることができる場合があり史料的価値が高いものである。史料がみられる。隠元録の「王振鵬所画五百尊者朝蜆観音図序」は,池大雅筆万福寺蔵の「五百羅漢図」の典拠となった図巻に付した序文である。また鉄牛道機の『自牧摘稿』のなかに見るような,『題文徴明詩帖』や『題牧癸谷和尚水墨観音大士』のような中国画の著録的性格をもつものがかなりの数見られる。真贋の問題はあるが当代の現在作品の資料となるものである。また月澤道澄の『心華剰録』にみえる「南都元興寺極楽院記」は極楽坊は当時院と呼んだことを記し,当代の寺院志の一例であるが黄架僧への依頼は多かったようである。同じく月渾の『義山稿』に尾形乾山の「習静堂記」はよく知られているところであるが,これに類するものも多い。また銘の中には鐘銘が多〈あり,これは第二次大戦中の供出で殆んどが失われていると思われ,銘文中の寺院志に関する内容と共に史料として貴重であろう。以上,黄槃語録から美術史史料としてどのようなものを取り上げ,その意義の一端についてふれて見た。なお調査した結果のなかで,その特色の一,二について見ておきたい。題讃のなかで圧倒的に多いのはやはり道釈画である。その中でも多いのは釈迦・観-l19_
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