鹿島美術研究 年報第3号
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-88年)には一度として現われないのである。今後は,他のモチーフについても分析o La France aux Pays-Bas :フランスとの文化交流の一連の催しで,オランダ芸術紀第3章の「楽園追放」と結びついたモチーフであり,庭園,愛,愛人といったテーマと相反するものである。そして,それ故,このモチーフは彼のユートピア時代(1887を行ない,統辞論的に分節化された主題系研究の方法を探ってゆく計画である。この展覧会カタログにおいても,以下のような未発表資料を紹介した。〇クリスチャン・ムーリエ=ペーテルセン(1858■1945):ファン・ゴッホと同時期にアルルに滞在していたデンマークの画家で,ファン・ゴッホと同じモチーフを描いている。友人ヨハン・ローデ(画家,1856-1935)への手紙でファン・ゴッホ兄弟に言及。アルルを去った後,パリのテオのもとに一時滞在した。0「起立工商会社」:ファン・ゴッホのだ円形の絵『三冊の本』の裏面に書かれている文字。この会社は明治期に日本の物品を輸出していた。この裏面の写真が出版されるのは始めて。〇ヨハンナ・ファン・ゴッホ=ボンゲル(テオ未亡人)からエミール・シュフネッケルヘの手紙1通。アムステルダム大学図書館所蔵の未発表書簡。以上2つのファン・ゴッホ研究と並行して1850■1930年頃のオランダ美術についての研究を行なった。本年度の主要な展覧会,出版物を以下に記す。0カイペルスの建築に関する展覧会:アムステルダム国立美術館が今年百周年を迎えたのにちなみ,一連のカイペルス展が開かれた。とフランス芸術の接点を扱ったもの。これ迄にヴェルレーヌ,近代美術,ル・コルビュジェなどの展覧会,出版物があり,モネについての展覧会も開かれる予定である。0ヤヌス・ド・ウィンター:無名ながら抽象絵画の先がけ的存在であるド・ウィンターの展覧会がユトレヒト中央美術館で開かれ,分散している彼の作品をまとめて見る機会を得た。-165-

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