研究するPapyrology,羊皮紙の冊子に書かれたテキストを研究するCodecologyがある。しかし挿絵の研究は少なかった。十九世紀になって美術史的な研究が起こり,Frantz大成したのはK.W eitzmannであった。写本挿絵の説話表現の起源が巻物であるのかコマ取りなのか,その時間的経過はどう表現されるかについて研究した。西洋の場合テキストが比較的安定しており,絵の異同とテキストの異同との間には関係がない。しかも説話が線的で(linier)であるため,絵の形式も線的な形式,即ちフリーズとならざるをえない。メソボタミアウル出土のペルセポリスの朝貢図・アッシリア出土の白いオベリスクの王の年代記・トラヤヌスの柱などにおいては異時同図はなく,時間の経過も不明である。下ってローマのポンペイの壁画においては異時同図を用いた時間表現が見出される。即ちBC6-70年の秘儀の間・儀礼の間と呼ばれる室では順を追って壁画を見ることができ,しかもそこには行列や神や皇帝が順次描かれている。また三世紀中のドウーラ・エウローポスの壁画にも行列を伴う絵が書かれている。一方ギリシャ神話を描いたギリシャの壺絵の場合,行列図を描いているが,時間的経過は曖昧である。これらのモニュメンタルな作品とは異なりエジプトとパピルスの場合はテキストの進行にしたがって簡単な挿絵が入る。これをパピルス形式と呼んでいる。エジプトの動物物語画巻などではテキストはないが,フリーズ式のものもある。やがて四世紀ごろからコーデックスが現れた。丈夫で挿図がしやす〈初期においては簡単でパピルスの様式を踏襲していた。やがてカロリング朝にはウェルギリウス写本がある。この場合挿図は枠の中に描かれ空間・背景がある。更にヨシア画巻を見るとコマ取り方式のヨシア物語りの本から絵巻式につないだものである。西洋における説話図の形式が画巻形式が元なのか,コーデックスが元なのか従来から議論が交わされた問題である。以上の辻の西洋における挿絵芸術の発展の歴史についての発表が,研究班のその後の研究の方向に示唆的であった。即ち日本・中国の説話芸術は極めて発達し,様々なた。しかも物語そのものが極めてヴァリエーションが多〈テキストと説話図との間は不安定である。そこで今回は絵巻に絞って研究をまとめることにした。研究代表者の百橋は『華厳縁起絵巻』を取り上げ,その説話の進行と画面の展開との関係を分析した。即ち絵巻の中でひとまとまりの画面の中にどれだけの時間経過がえがかれていWickhofftが,また考古学的なアプローチとして,C.Robert Birtがいる。これらを物語・説話に,さらには画巻・絵巻•そして大画面にといろんな形式の画面に描かれ_ 167-
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