鹿島美術研究 年報第3号
218/258

この戯曲本は,長沢規矩也氏旧蔵の双紅堂文庫の一冊で,戯曲小説書約34冊を収蔵する。ほかに,7部55冊を閲覧。9日静嘉堂文庫玉川河畔に近い,岩崎家の静嘉堂文庫には,中国の学者をしで惜別の涙を流させたという宋版200部を有し,苗宋楼と称した。陸心源の蔵書をもつことで有名である。忠義水滸全書120回32冊明刊のほか,6部66冊を閲覧。帰路,中国美術史の新藤武弘氏を新潮社,鶴田武良氏を国立文化財研究所に訪ねる。11日宮内庁書陵部は,特別警戒のため後日に。内閣文庫琵琶記2巻2冊明刊(朱墨套印)挿絵は,呉道子,米元章,馬遠など歴代著名画家の筆意を伝えたもの。版心にある,素明刻像は,この書の成立年代を知る手がかりとなる。12日芸術大学資料館,東京国立博物館,西洋美術館を見学。博物館の資料室へは,明清期挿絵版本の閲覧を希望しておいたが,希望の図書がなかった。13日奈良大和文華館太平山水図1帖粛雲従絵(清)順治5年(1648)刊仙佛奇踪8巻7冊明刊蘇州版画美人図,風景図,4軸清刊山水図は希代の精刊本,別に筆者不明の彩色本,椿椿山の模写のものがある。文華館では,昭和47年,わが国で最初の,「中国の明・清時代の版画」展が開催されている。14日天理図書館玄風慶会録残巻1冊(元)大徳9年(1305)刊ほかに,9部73冊を閲覧。天理での調査には,一枚刷り版画のことばかりが頭にあって,版本に対する事前調査が不十分のため,「蒻鏡記戯文」明刊などを見る時間がなかった。15日神戸市立博物館“国際文化交流,東西文化の接触と変容”を目標とするこの博物館には,「姑蘇万年橋図」乾隆5年(1740)刊行ほかの蘇州版画を収蔵している。また,昭和59年の「眼鏡絵と東海道五十三次展ー西洋の影響をうけた浮世絵ー」の特別展では,中国の眼鏡絵(拉洋片)と日本の浮世絵との関係をとりあげている。_200-

元のページ  ../index.html#218

このブックを見る