鹿島美術研究 年報第3号
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C •岩面刻画(ペトログリフ)のモチーフ(3) 大陸文化の南太平洋地域への流入に関する美術史学的調査ーとくに石造美術の伝播と木製彫刻の分布について一派遣研究者:国立民族学博物館研究部助手秋道智弥目的:南太平洋地域,南米に点在する巨石文化を広範囲な野外調査によりあきらかにする。とくに重要な目標は,(a)イースター島における巨大像モアイの系譜にかかわる人像の比較調査,(b)太平洋,南米の石積み遺跡の比較分析,(C)ペトログリフ(岩面刻画)のモチーフに関する比較,海洋文化の特質をあきらかにする。(d)岩壁画のモチーフの比較研究。以上の諸点から,太平洋の巨石文化の重層性を東南アジア,南米との文化史的関連のなかで明らかにする。海外における研究活動状況:南太平洋・南米において実施した野外調査の活動内容を,A.研究視点,B.活動状況,c.海外の研究動向の三点にわけてのべる。イースター島で特異的に発達した巨石像モアイの系譜を,ポリネシア文化圏,及び南米のプレ・インカ文明との相互比較のなかで調査・検討する。とくに,マルケサスソシエテ諸島,オーストラ大像の比較。石を用いた構造物,建築物の分布と機能,構造上の特徴を網羅的に調べる。石積みの建築物(基,祭祀場,宮殿など)は,比較的広範囲に見られるが,特に分布的研究はない。ポナペ島のナンマドール遺跡,西サモアのスター・マウンド,ポリネシアー円のマラエ,パエパエ(基壇),南米の石積み遺跡などを,構造,材料の石などから比較・検討する。様々な種類のペトログリフのモチーフ,中でも海洋生物や鳥にかかわるものの分布と形式の比較調査。特に,グンカンドリ,クジラ,サメ,マグロ,ウミガメなど,オセアニアの海洋文化の特徴を示す動物群モチーフの分布と形式,意味論に関する調査。A.研究視点a.巨石像の系譜関係b.南太平洋における石組みの遺跡の分布南米ボリビアのティワナコ遺跡における巨217-

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