鹿島美術研究 年報第3号
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(4) フィレンツェ派の祭壇画(1480■1520)の研究ー画面構成を中心とした諸問題一1980年以来,研究テーマとして進めてきたイタリア・ルネサンス(特にフィレンツ32回美学会全国大会(1981.10)にて発表。注2)「成城文芸」第108号(1984・3)に1320年頃にかけてのローマ周辺」(後出の文献表参照)であった。この論文については,派遣研究者:フェリス女学院短期大学講師田辺目的.. ェ派)の祭壇画(1480■1520年)の諸問題の考察の第三段階に至るものである。これまで祭壇画研究の第一段階注])として背景,描写,第二段階注2)としてフラ・バルトロメオを中心とした盛期ルネサンスを対象としてとりあげてきたが,今回は以上の二つの問題から派生する第三の問題として,画面構成によってより深く堀りさげた考察を試みたい。その際くサクラ・コンヴェルサツィオーネ(聖会話)〉の概念の再検討等,祭壇画をめぐる基本的な問題に焦点を置き幅広い視野での研究をロンドン滞在中パトリシア・ルビン女史(コートールド美術研究所)の指導を受ける。注1)は第論文掲載研究報2月19日よりコートールド美術研究所で研究を開始した,ルビン女史(コールド美術研究所)から早速アドヴァイスを受けることができた。主な内容は今回の研究に必要なリーディング・リスト(雑誌論文を中心とした)と,ロンドンで受講可能ない〈つかの研究所での特別講義についてであったが,今回の研究テーマに関してルビン女史から一つの注文があった。くサクラ・コンヴェルサツィオーネ(聖会話)〉に主眼を置くことを予定していたが,ルビン女史は「<サクラ・コンヴェルサツィオーネ〉の概念を再検討しようというのは大変野心的なことだと思うが,<サクラ・コンヴェルサツィオーネ〉はあくまで祭壇画の一形式に過ぎず,その問題にあまり深入りしても良い成果は期待できない。切角フラ・バルトロメオについて種々調査してきたのだから,ドメニコ会〔注:フラ・バルトロメオ(1472-1517)はドメニコ派の修道士画家〕の教会のために描かれた祭壇画についてのパトロネージ(芸術保護)とか祭壇画そのものの機能といった問題から始めて見るのが賢明なのではないか」というアドバイスがあった。ルビン女史が最も重要な文献として指摘されたのが,現在コートールドで教鞭をとられているジョアンナ・カノン博士の博士論文「中部イタリアにおけるドメニコ会の芸術保護ー1220年頃から221-

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