ロニンゲン大学のヘンドリック•W・ヴァン・オス博士をはじめとするオランダの研3月12日に同じくロンドン大学付属のウォーバーグ研究所で,イタリア・ルネサンス史の権威ニコライ・ルビンシュタイン教授に会った所,最高の資料として同教授からも薦められている。(今回カノン博士の厚意でユニーヴァーシティ・ライブラリーにある同論文のマイクロ・フィルムを入手し今後の研究の参考資料としたい)。ルビン女史から口頭で伝えられたリーディング・リストの内容は,カノン博士の前述の論文の他,英米を中心に活躍する研究者の雑誌論文が主だったものであったので,早速その翌日からコートールド並びにウォーバーグ研究所の図書室両方とも地下一階にある雑誌部門の収集に取りかかり,必要なコピーも同時に始めた。また,なおウォーバーグの入館証並びにブリティッシュ・ミューゼウムの素描室の入室証はルビン女史の紹介状により入手している。また女史のリーディング・リストにある雑誌論文の多〈は我が国でも入手出来るものであったが,基礎的な作業として両研究所でその収集に努めた。雑誌論文を中心とした資料の収集は関連するものを系統的に行うことによって実に多岐にわたり,コピーの数も膨大なものとなった。内容は欧米の学者による14世紀以降のフィレンツェ派並びにシエナ派のドメニコ会関係の祭壇画についてのものが当然ながらそのほとんどを占めている(後出の文献表参照)。これらのうちのいくつかはグ究者によるもので,しばしばオランダにあるイタリア・ルネサンスの作品が論文の中で紹介されていた。当初,今回の留学中のイタリア(主にフィレンツェ)とフランス(主にパリ)を訪れることを予定していたが,日程を考慮してイタリア・フランス両国の代わりにオランダヘ行き,アムステルダム,ロッテルダム,デン・ハーグで前述の諸論文中に言及されている作品を実見することにした。やはり2月20日にルビン女史から聴講することをすすめられたロンドンの諸研究所での特別講義にも興味深くしかも内容的にも優れたものが多くあった。まずコートールド美術研究所ではカノン博士が前述の博士論文に基づいた五回連続の講義「美術と修道士」(この講義はすでに1月末から始まっており,私は三回目から聴講した)を,またルビン女史自身も15世紀のフィレンツェ派絵画についての一連の講義を三回に亘って行った。この二つはいずれもコートールドの一般学生向けのものであったが,非常に高度な内容であった。コートールド独特の『公開講座』(毎週火曜日と水曜日の夕刻に行われる)ではロンドンのロイヤル・アカデミーで1月16日から-222-
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