鹿島美術研究 年報第3号
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講演題目1.「ゴッホ・人と作品」聴衆の皆様。本日は,国立西洋美術館の有川治男氏が通訳してくれます。皆様の中で英語のお分りになる方には,英語と日本語のシャム双生児のような講演をお聞かせできるわけです。日本語しか分らない方に対しては,残念ながら私は日本語が出来ませんが,ただひとこと,「日本語が話せなくて,残念です」と申し上げさせていただきます。ゴッホについて,彼と同国人であるオランダ人が講演するのを聞くのは,皆様にとって,これがはじめてではないかと思います。丁度良い機会ですので,ここで,「ゴッホ」の名がオランダ語でどう発音されるのか,聞いていただきたいと思います。オランダでは,彼のことを「ファン・ホッホ」あるいはフルネームでは,「フィンセント・ファン・ホッホ」と言います。「ゴッホ」と「ホッホ」は,少なくとも,最後の「ホ」という部分では似ています。イギリスの人達は,普通,「ヴァン・ゴーフ」と言い,アメリカ人達は「ヴァン・ゴー」と言い,またフランス人にとっては,どの発音も難しいらしくて,しばしば名前の方をとって,「ヴァンサン」と呼びます。これから私は,この画家の作品を皆様にご紹介できることを大変喜びとしているのですが,彼の名前を出す時,ときにはいろいろな呼び方が混ってしまうかもしれないことをお許し下さい。今回の講演は,皆さんにゴッホを紹介するというだけではなく,いま国立西洋美術館で開かれている,実に見事なゴッホ展を紹介しようとするもので,むしろ,その方を第一の目的としたといっても良いと思います。実際,この展覧会に展示されている,ゴッホの油彩画や素描を研究し鑑賞できるということは,皆さんにとってすばらしい幸運であると,私は申し上げたいと思います。この展覧会は,世界中の多くの人々から賞讃されているゴッホという芸術家の作品に直接触れ,それを直接観賞出来る機会を与えてくれる,すばらしいものなのです。ゴッホのようなスーパースターをどのように扱うか,ということに関して,国々によって,それぞれのやり方があることは,勿論です。あるカナダの新聞ですが,その新聞が第一面に,ゴッホの自画像と現代のスポーツのヒーローたちの姿とを並べていました。この新聞を見たのは,1981年,カナダのトロントでゴッホ展が開かれていた時のことですが,その時,まず最初は,ゴッホのような立派な画家がラグビー選手たちと顔写真のスペースを分け合っていること元ゴッホ美術館館長“Van Gogh, his Life and Works" Johannes Van der Wolk ヨハネス・ファン・デル・ヴォルク-11 -

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