鹿島美術研究 年報第3号
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でありつづけてきました。1973年,今から12年前に,二番目の美術館か‘公開されました。これはゴッホのファンのための美術館で,すなわちアムステルダムのファン・ゴッホ美術館です。ゴッホは,日本の浮世絵版画をとりわけ好んでいました。今回の日本でのゴッホ展のカタログには,馬渕明子氏が書かれた非常に内容豊かな論文と,有川治男氏が書いた個々の作品解説によって,充分な情報が与えられます。ゴッホが自らを「坊さん」「坊主」として描いた有名な自画像は,アメリカのケンブリッジ大学付属フォッグ美術館にあります。ゴッホはここで自分を日本の僧侶として描いており,わずかではありますが,意図的に,目尻をつり上げて描いています。ゴッホはこの作品を,友人であるポール・ゴーガンとの交換作品として描いたのですが,彼はおそらく,ゴーガンに,自分たちは日本の事物への関心を分かちあっているのだということを思い出させたかったのでしょう。それもーゴッホ自身はそう信じていたのだと思いますが一容貌がいささかなりとも日本の坊主に似てくるほど,日本への関心を持っている,ということを示したかったと思います。ゴッホの自画像に並べてお見せしたいのは,日本の画家が描いたもので,ゴッホの自画像でもなければ,ゴッホを描いたものでもなく,ワシントンからやってきた赤毛の南蛮人を描いたものです。奇妙なことのように思われるかもしれませんが,ゴッホがパリからアルルヘ向けて旅立った時,彼は自分は日本への旅に出るのだと考えていました。今なら,飛行機に乗る時,こゴッホ自画像並びに赤毛の南蛮人-13

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