鹿島美術研究 年報第3号
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2.近世異端派画人の思想的研究18世紀はその最たるものというわけだろう。18世紀後半の思想界の変貌と連動しているのである。そのことをお話させて頂きたい3.中世セルビア美術について京都国立博物館主任研究官狩野博幸「近世異端派画人の思想的研究」とは,換言すれば,「日本の18世紀文化の見直し」の作業にほかならない。従来の日本史学的見地によると,江戸時代は「鎖国」の時代であって,諸外国との刺激的交流が途絶えて幕藩体制が整備されることにより,人々は安眠に堕し,時代は閉塞状況にいやましになった,ということになるだろう。いわんや,江戸時代の真ん中ともいうべきだが,果たしてそうか。絵画という限定された領域のみに絞っても,決してそうではなかったといいきれる。大雅・蕪村・応挙・呉春・若沖・爾白・芦雪を除外して,江戸時代絵画いや日本絵画史を展望することが可能だろうか。不可能である。小林忠氏がいみじくもいわれたように,この期の画人の活躍は,絵画の幕藩制すなわち狩野家支配体制に対しての“異議申立て”の意味をもっていた。その最も先鋭的な画人が,若沖・爾白・芦雪らのいわゆる“異端派”の人々である。では,“異端派”の画業はどのような意義をもつか。彼らの存在を単に絵画の領域内で捉えようとする限り,その答は立体的になり得ないだろう。彼らの画業は明らかにと思う。ー写真資料の収集とそれを使って画家たちの仕事ぶりの復元一岡山大学文学部助手鐸木道剛ビザンチン美術についての型にはまったとの印象は,近代のイコンによって形づくられたと考えられるが,19世紀にイコン画家が使用していたヘルメネイア(ロシアではポドリンニク)つまり手本が発見されたことで保証された。しかしビザンチン時代38 報告中の狩野博幸氏

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