ー45-1.近代百年中国絵画・画家資料の収集と研究研究者:東京国立文化財研究所写真資料研究室長鶴田武良研究目的:近代中国絵画研究に必要な画家人名辞典をはじめ基礎的な資料が全くなくまた関係文献が散在し,研究を進めることが困難であることを痛切に感じ,以来画家カードの採録と文献の収集を第一目的として行ってきた。それも単に画集,展覧会カタログからの採録だけでなく,広〈民国期刊行の雑誌文献を雑誌の主題に関係なく閲覧し,ヵードをとり,また作品から活躍時期,字号を採録するというように広範囲な資料から画家カードを作成してきた。これまでの過程で公刊した近百年中国画人資料”(美術研国画家人名辞典の完成が学界に神益するところは極めて大きいと考えられる。研究者:北九州市立美術館学芸員後藤新治研究目的:ルオーの芸術は,あらゆるジャンルにおいて,matiさreの探求であったと言ってよい。ステンドグラスに始まり,陶器の絵付けを経て,水彩画や油彩画に至り,銅版画において飛躍的進歩を遂げた後,再び油彩画へと戻ったルオーのmatiさre研究は,たんに技法上の問題として重要であるばかりでなく,奥深い彼の芸術観そのものに根差していた。しかしながら従来のルオー研究は,作品の直観的洞察にもとづくルオー精神の讃美に終始するものが多く,絵画的肉体たるmatiさreや,その技法の探求は乏しかったように思われる。そうした反省にもとづいて,私はルオーの代表的銅版画集である『ミセレーレ』(1922-27製作)を調べてみた。そこで解ったことは,描くのではな〈,むしろ削り取るといういわばnegativeな描写態度が,銅版画の白のmatiさreを光のスクレイパーというエ具で削り取りながら描き進めていった結果,白の色価が高まったことに起因している。これは「悲劇は光である」という彼の芸術観とも通底し合いながら,1920年代のルオーの制作態度を特徴づけている。今回の油彩画研究は,この採択課題研究目的究293■304)は欧米及び中国,台湾の研究者によっても常に引用されており,近代中2.ルオーの連作油彩画「受難」とその木版画との比較研究matiereへと変化せしめたということであった。具体的には,いったん描かれたものを,
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