鹿島美術研究 年報第3号
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5.フィンセント・ファン・ゴッホの作品の資料的研究4.近代禅画の基礎的研究ー白隠・遂翁・東嶺を中心として一研究者:富岡美術館学芸員浅井京子研究目的:近世禅画ーZenPaintingの訳語である“禅画”をここでは近世禅師の墨画遺品=遺墨に限定して使用ーに対する関心は,近年,国内はもとより欧米においてもかなりの高揚がみられ,殊に欧米では神秘的な東洋の“禅”思想を理解するための一つの確かな糸口として,国内でのそれ以上に興味がもたれているともいいえる。ところで,戦後の禅画研究はクルト・ブラッシュの著作(『禅画』1962,『禅と日本文化』1972)によって拓かれたと考えられるが,それを美術史の立場で真正面からとり上げた研究は意外に少ない。(竹内尚次『白隠』1964,古田紹欽『仙厘』(出光美術選書I)1966, 辻惟雄『江戸の宗教美術/白隠・仙厘』(日本美術全集23)1979,棚橋一晃『白隠の芸術』1980など幾つかがあげられるが,一般には難解とされる禅画_ここでは当面の対象を近世禅宗史の上でも重要な人物である白隠及びその弟子の遂翁・東嶺の遺墨にしぼる一一についてまず基礎的資料の調査・収集を行うとともに,究極的には近世絵画史上におけるその正当な位置づけを試みようとするものである。研究者:国立西洋美術館学芸課主任研究官有川治男研究目的:ゴッホの作品が彼の書簡の中でどのように言及されているかという問題は,ゴッホ研究の極めて重要な一分野であり,ド・ラ・ファーユの「ゴッホ総カタログ」(1970)フルスケルの「ゴッホによるゴッホ」(1973)などや,その分野での研究成果を示している。しかしながら,それらの研究は必ずしも完全なものではなく,1985年の「ゴッホ展カタログ」作品解説の中で明らかにしたように,例えば有名な「ゴッホの寝室」についてさえ,その解釈に関して極めて重要な言及箇処が,これまで指摘されていなかったのである。この例の場合,ゴッホがその問題の箇処において,この作品の題名をはっきりと挙げていないため,これまでの研究者の目から逃れていたものであるが,一般に書簡の中での作品の言及は,今日我々が呼んでいるような題とは異なる名で,しかも幾通りもの違う名称で行われていることも多い。本研究では,ゴッホの書簡に出てくる彼の作品に関する言及を全て収録相互に比較し,作品自体と対照する作業を,-47 -

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