6.シャルトル大聖堂「王の扉口」装飾小円柱ー12世紀における一建築主題の起源と伝(2) 小円柱あるいは円柱に装飾を与えるというテーマは古代から連綿と受け継がれて(3) 地上からでは観察の困難なシャルトルの小円柱の装飾を細部に至るまで多様な考(4) 扉口側壁の構造の中における人像円柱と装飾小円柱の関係に関する分析によって,完璧に行う。今後のゴッホ研究にとって不可欠の基礎研究と思われる。ゴッホの書簡の日付等に関する再検討を含め,当面,現行の総カタログ及び書簡集の不備を一部分おぎなうものとして,一応,1988年に完結させたい。播一研究者:パリ大学博士課程在学木俣元一研究目的:(1) シャルトル大聖堂「王の扉口」の彫刻が問題となっているということは,とりもなおさずゴシック彫刻の誕生が問題となっている,ということである。だが,ロマネスク彫刻とゴシック彫刻とは,画然と区分され得るものではなく,シャルトル西正面で制作を行った工房の中にも,重層し,混在し,並置され,対比される形で,未来に対して開かれた先進的部分(人像円柱)と過去の伝統の中に養分を得ている部分(例えば小円柱)が存在することに注意しなければならない。我々が,これまでのように,人像円柱やタンパン彫刻にのみ着目するのであれば,初期ゴシック彫刻の展開の全体像をいくぶん表層的に捉えることになるであろう。本研究では小円柱の呈示する豊かな彫刻を通じて,ロマネスク彫刻の流れの中に,そして北フランス・イギリスという当時ほぼ一体をなしていた芸術圏の土壌の中に,改めてシャルトル西正面の彫刻を位置づけることが中心的意義のひとつである。きたものだが,それが12世紀を通じていかに多様で興味深い仕方で実現されていたかを明らかにし,ロマネスク彫刻の未だよく知られていないー側面に光を当てる。古学上・美術史上の分析を行い資料を提供する。初期ゴシック扉口彫刻に対する新しい視点を呈示する。以上が現在構想中の初期ゴシック扉口彫刻に関するより広範な研究の一部で,その基本的理念を呈示する。-48 -
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