18.近世初期祭礼図及び遊楽図の研究19.鎌倉時代の浄土宗教団における造像に関する研究研究者:大阪府立大学総合科学部講師奥平俊六研究目的:祭礼図や遊楽図は,無落款の作品がほとんどである。したがってこれに対するアプローチは,描かれているものの徹底的な分析を行うよりほかはない。しかし,祭礼図や遊楽図の景観内容は極めて豊富であり,ー図に何百人もの人物が細かく描かれていることが多い。通例の図版では,その細部を考究することは困難である。詳細な写真資料の収集が不可欠である。画家についても従来は土佐派系,狩野派系,長谷川派系と分け,それ以外は町絵師として一くくりにされることが多かった。しかし,たとえば「末次本賀茂競馬図の画家」として,その影椰下にあった画家の集団を考えてみるのも有効なのではないかと思う。そして,その具体的な指標として,人物の組合せ方のパターンの類似や,頻出するモチーフ(子を肩ぐるました親,酔態の僧侶,ほえかかる犬など)の類型化の度合などを見ていくとともに,また制作年代についても,特定の建造物による景観年代の推定以外に,上記の方法が最も有効であると考えられる。研究者:東京国立文化財研究所美術部主任研究官三宅久雄研究目的:日本彫刻史は言うまでもなく仏教史と密接に関連しているが,我国の仏教が宗派仏教として発展したということは,影刻史を考えるうえで看過し難い。鎌倉時代は旧来の南都諸宗,真言天台宗などのほか,浄土,禅,律,時宗など,宗派の多様化,大衆化が進んだ時代であり,仏教信仰が質的に大いに変化した。このことは美術史上にも相応に影椰を与え,しかも各宗派それぞれに特色を示したことと考えられるが,本研究はまず浄土宗を対象とし,こうした事情を解明することを目的とする。この種の研究は従来,教義と作品の表現形式,形態の関係を中心にした,主として絵画作品についてのものが多いが,本研究では彫刻史の立場から浄土宗における造像活動全般を対象とする。すなわち,その彫刻作品の造形表現上の特質のほか,教団と仏師との関わり,造像活動を通しての仏師の流派形成,作風,技法の伝承などについ_ 57 -
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