26.近世初期土佐派の研究一京都市立芸大所蔵土佐派資料を中心に一25.室町時代土佐派作品の調査研究ー中世後半期におけるやまと絵の展開一研究代表者:東京国立博物館美術課絵画室長村重研究目的:室町時代のやまと絵に対する関心は,近年,急速にたかまりつつある。その理由は,相次ぐ作品の新発見に加えて,室町時代を前後の時代と共に捉えようとする大きな視野が求められているからであろう。近世初期の華麗な障壁画群に連なり,むしろそれらを先取りする存在として,室町時代のやまと絵が想定されるようになってきた。もはや,室町時代のやまと絵をぬきにしては,日本の絵画史を一貫したものとして語ることはできないといってもよい。それにもかかわらず,室町時代のやまと絵作品そのものの研究は,単発的な紹介論文の発表を除き,ほとんど進展していない。あまりにも多種多様な作品が伝存する方で,過去の研究の蓄積が乏しく,作品を整理,分類する基準すら定まっていないからであろう。特に,当時のやまと絵を全て土佐派に帰する安易な態度が,混乱を一層大きくしている点は否定できない。こうした状況にあって現在,最も必要とされるのは,土佐派そのものの作品を具体的且つ総合的に調査し,その様式や特質を把握し,研究の基盤を固めることであると思われる。すなわちこの研究の目的は,室町土佐派の作品研究を通して,まとまりのつきにくい室町やまと絵の研究に一つ着実な基盤を提示し,併せて室町やまと絵の史的価値を再確認することである。研究者:京都市立芸術大学大学院修士課程岩間研究目的:現在,狩野派や江戸時代諸派の縮図や下絵などがある程度明らかにされている。それに対し大和絵関係の縮図や下絵はまとまったものが紹介されたことはない。その意味で京都芸大の土佐派資科は大和絵の正系である宮廷絵所預りの家に伝来したものとして大変貴重な存在である。また中世から近世に至る長期間に亘るものであるため,作画活動を系統づけるのに恰好の資料と考えられる。就中,桃山時代のものと思われる下絵類は同時代の乏しい画跡を補ない得る重要なものである。これらの下絵類を検討することにより,土佐派画人の画跡,制作過程,背景などを知ることができる。さらに,下絵類に該当する本画を探すことにより,現在筆者が不明としている絵の作者寧-62 -
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