鹿島美術研究 年報第3号
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32.南北朝より唐代に至る大陸神将形像の服制・甲制の展開とその日本に及ぽした影響に31.探幽縮図索引の作成研究者:東京大学文学部助教授河野元昭研究目的:本研究の目的はすでに纏められている京都国立博物館所蔵本以外の探幽縮図について詳細な索引を作成することである。探幽縮図の意義については,すでに脇本十九郎氏が「これ(探幽縮図)が徹底的検討を試みるにおいては美術史研究上寄与する所が勘くあるまいと思われる」と指摘している。本研究はこの徹底的検討のための基盤となる総索引を作成するものである。探幽縮図はそもそも三つの点で重要な意義を有している。第一は密教図像などを除けば,縮図としてもっとも時代が遡ることである。探幽の晩年に当たる寛文年間(1661■1672)のものが大半を占めており,それだけ資料としての価値も高いことになる。第二は量的にすぐれていることである。探幽がこれほど多量の縮図を取ることができたのは,かれが幕府奥絵師の地位にあったからにほかならない。可ま探幽の卓越した描写力によって質の高いものとなっていることである。したがって,探幽縮図は探幽の美的特質を解明する鍵であると同時に,今は失われてしまったわが国及び中国・朝鮮の古画が多く写し留められている点で,東洋絵画史の研究資料として第一級のものなのである。しかしながら,膨大であるだけに索引がなければこれを活用することはほとんど不可能だといってよい。本研究はこの陰路を一挙に解決するものである。ついて研究者:東京芸術大学美術学部講師松田誠一郎研究目的:日本の古代美術史の研究を進めてゆく上で,作品の編年を行うことと大陸との関係を明らかにすることは,現在の研究段階においては最も重要な課題と思われる。そして従来この美術史学の最も基礎的な作業に当っては,専ら二つの方法が用いられてきたようである。一つは,作品の作風を問題にする様式論であり,今一つは,作品に関-66 -

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