鹿島美術研究 年報第3号
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34.曽我癖白の研究35.雑密系尊像における神仏習合の諸相るが,特に,自身の作品に関する記述には興味深いものがあり,こうした記述と実作品とを対照,研究することによって,平八の彫刻制作の構想や,制作途中の心理状態についても,より具体的に解明できるものと考えられる。また彼と交友があった日本美術院の作家たちに関する新しい知見も発見できるものと期待される。研究代表者:三重県立美術館学芸員牧野研一郎研究目的:曽我爾白の研究は,辻惟雄氏,マニー・ヒックマン氏等の研究により,最近十数年,飛躍的に,発展した。このたびの調査研究では,それを受けて,山水画,花鳥画,人物画等の各分野にわたって総合的に調査し,爾白の作風の由来を辿り,その影粋関係を明らかにすることにつとめ,また,前記の漢画派を含めた同時代の画壇との係わり合いについても考究を加えてみたい。そうすることによって,これまで同時代の他の画家に比較してあいまいであった爾白の人物像,画歴,画壇での位置付け等を明らかにすることが幾分か可能になると思われ,江戸時代中期の画壇の状況の一端を探ることができるように思われる。研究者:京都市立芸術大学非常勤講師研究目的:雑密系尊像の霊異表現としてもたらされたものが,いかにわが国の土着の造形と融合し,消化吸収され,根を下ろしていくかということを,多くの作例の多様な表現を通じて明らかにしてゆきたい。中央・地方といった分け方ではなく,そこに共通した何らかの造形性を認めることも可能であろう。編年は第二次的な問題として,まず個々の「形」の解釈を重視することで,新たな彫刻史での一測面が開かれるものと確信する。-68 -藤佳香

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