鹿島美術研究 年報第3号
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Galleryの関係者たちにたずねても,その名前すら知らない状態である。この種の研究British Councilの美術部長JulianAndrews前記LawrenceSmith諸氏)と話題にしCollectionの問題について,意見を交換してきている。Britishmuseumの新計画3.宋代仏画の整理と研究美術が西洋美術に与えた影響すなわちジャポニスムの再検討,再発掘,再評価が盛んになってきている。相次ぐ関連図書の出版,シンポジウムの開催,展覧会の開催等めざましいものがある。こうした状況の中でかつてジャポニスム盛行の一拠点であったイギリスにおけるジャポニスムの研究が,残念ながらこれをフランスの状況などと比較すると,きわめて貧弱で遅れている。W.Anderson Collectionが未調査のまま放置されて今日に至っているということはそのいい例であろう。BritishMuseumの東洋部長L.Smith氏ですら,英国内でAndrersonの研究をしている人は一人もいないだろう,ということである。日本の近代洋画の発端に重要なかかわりのあるCharlesWirgmanの研究も,Tateは,いうまでもなく彼我の研究者間の相互協力がなければ不可能であり,しかしその点に関しては機会あるごとにイギリス関係者たち(Tateの近代美術部長RonaldAlley, てきていて,相互協力の必須性を確認しあってきた。特にL.Smith氏とはW.Anderson 「JapaneseGallery」の新設問題もあって,Smith氏の日本に対する期待は大きい。「ジャポネズリー研究学会」においても,かねがね本件が話題になり,本調査研究が出発すれば,多くの若い研究者たちの関心を引くことは必定であり,それによって予想される効果は計り知れないものがあろう。イギリス本国におけるジャポニスム研究への関心をよびさますことになるだろうことも確実である。研究者:京都大学人文科学研究所助手宮崎法研究目的:日本を中心にまとまった数が残る宋代の仏画は,中国の時代の絵画の様相を直接に我々に伝えてくれる。文人趣味という良くも悪しくも中国文化を支配していた伝統から“画エ・職人の仕事”として顧みられることがなかったことは,同時に,その為の弊害からまぬかれていることをも意味している。すなわち有名画家に擬せられることも,贋作がつくられることもなく,制作された時期の作風を直接に今日に示しているのである。特に宋という時代の事物を冷徹に把え表現する指向は,それらの仏画の内-71 -

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