鹿島美術研究 年報第4号
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くるそん121)などの珍しい図像のものもある。さをよく表出している。③釈迦くNo.107■llO〉修業中の釈迦や悟りを開いて山を下る‘出山釈迦、を描くもの。今回調査し得た4点の‘出山釈迦、は共に白隠70代のもっとも気迫の充実した時期の作品である。④観音くNo.lll■168〉室町水墨画以来の,水流をながめ岩上に坐す白衣観音の図像によるものが多い。しかしその場合,白隠は観音のかたわらに置かれた水瓶に楊柳ばかりでなく梅を添えたり,更には経巻と如意を添えたりしている。また水流を蓮池に変えるものも多い。その他蓮池より生い立った蓮華の一つに坐す観音や,一片のに横たわる観音,龍王をはじめ海の生き物達を前に説法する`蛤蛸観音、などの図像か見られ,`蛤悧観音、の中には,蛤悧より現出したばかりの観音のみを描くものもある。岩上に楊柳を挿した水瓶のみを描き,観音を象徴する図像があるのも①や②の場合と同様である。この他,瓢蹴の中に坐す観音(No.120)や楊柳観音の立姿(No.この観音図については,白隠60代中頃の製作と推定されるものから,83オの年記をもつものまで一すなわち彼の作画活動のほぼ全期間を通じて一みられ,種類も多様で,白隠画の展開を考える上では①の達磨と合わせてまず取り上げるべき基本的な主題と思われる。⑤その他諸尊くNo.169■182〉釈迦・観音以外の諸尊で,文殊・地蔵などをこの項に入れた。なお栗尊仏とは釈迦の前仏といわれる狗留尊仏のことで,寒山拾得に見たて且つ画面に描かれた`栗、に`狗留、をかけている。また60代前半の作と考えられる松蔭寺の地蔵(No.175)は衿掲羅・制托迦の二童子を従えた不動三尊のような構図をとるものだか,白隠のうまさを如実に示す作品である。⑥福神くNo.183■252〉七福神及び布袋,大黒天,福禄寿,恵比寿,寿老人などを単神で描いたもの。布袋の姿と共通するお坊坐禅もこの項に含めた。なかでも白隠の変化相かとも想像される布袋は,様々な姿で描かれる。いまNo.195の弁財天は60代前半の作とみなされ,樹木や岩に狩野派の技法を習得していたことをうかがわせる。緑・黄・朱の淡彩を施し,後の色彩家白隠の性格を早くも示し,白隠画の成立を考える上で欠くべからざる作品である。⑦神祇関係くNo.253■292〉白澤・神農・天神・鍾旭などの他,聖徳太子や役行者のように厳密には仏教関係に入らないものも含めた。渡唐天神のうちNo.275は-85 -

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