鹿島美術研究 年報第4号
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つ。(700■704)に再建されたという『長安誌』などの史料の記事を裏付ける証拠となろ*慶山寺舎利塔精室からの出土品(臨憧県博物館「臨滝唐慶山寺舎利塔基精室清理記」『文博』1985-5参照)大唐開元慶山三寺上方舎利塔記には開元29年(741)の記年銘があり,他の遺品もその頃の制作と考えられる。a舎利塔記碑(高82cm)宝相華,獅子。b門(高45cm,幅115cm)宝相華,伽陵頻伽,孔雀,鳳凰。c門桓(高66cm・幅17cm)宝相華,龍獅子,鳳凰。d門扉1対(各高80cm・幅34cm)天部像2謳,飛天。e舎利宝帳(高109cm)釈迦説法図.涅槃図.荼毘図・供奉図,宝相華,飛天。なお『文博』の報告によると,薬師像,阿弥陀像などの壁画が計5幅あるという。最近の発掘出土品のなかでは,高水準の仏教遣品であること,まとまった数量があり,保存が良好であること,制作年代と由来が明確であることなどの点で傑出した存在であろう。日本の奈良時代の仏教美術の母胎である盛唐美術に関しては,制作年代の明確な中央の遺品がほとんど現存しないため具体的に日中の影縛関係を探りにくいが,これらは正に遣唐使による交流が最も盛んであった開元期のもので盛唐様式の充実した様相には圧倒される,今後はこのような発掘品に期待したい。(3) 大慈恩寺大雁塔(西安市内)有名な東西南北の門上楯石に線刻された仏説法図と南門両脇に嵌入された三蔵聖教序碑2基(いずれも永徽4年(653)銘),および門桓に線刻された天部像を精査した。*南門基壇石南門の基壇石の側面にはほとんど目だたないが,中心の獅噛の口から左右に展開する流麗な唐草が線刻されている。これは永泰公主墓(神龍2年・706)の唐草に最も近く,盛唐前期様式の典型的なかたちを示している。大雁塔が長安年間(4) 昭陵碑林一昭陵博物館内(礼泉県)昭陵碑林には1964年以降発掘された太宗昭陵の陪塚からの出土品が集められている。これらの墳墓は初唐に造営され,規模も大きく,すべて墓誌により制作年代が明確であるので,出土品の墓誌石,石門などに施された装飾文様は正当な基準作例として格好な資料である。かつて「初唐の植物文様について」(『美術史』118号)でとりあげた張士貴墓(顕慶2年・657),尉遅敬徳墓(顕慶3年・658),鄭仁泰墓(龍朔3年・663),(咸亨元年・670),阿史那忠墓(上元2年・675)に関してはごく一部のデータ-109 -

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