•名古屋市鶴舞中央図書館約200点•国立国会図書館•他に個人所蔵等心がけた。調査の上での心づもりとしては,従来の様に単なる副次的資料としての利用にとどまらず,挿絵のもつそれ自体の価値の追求を心がけたが,ただ,一年間という限られた時間の中で扱うには対象はあまりに膨大であり,ために今回の成果の報告に関しても,特に体系的かつ統一のとれたものではなく,いささか散慢な羅列的なものとなったことは否定できないが,この点は今後の研究の土台として,近い将来有効に活用できる機会があるものと信じている。なお,調査し得た版本の点数の概略は,以下の通りである。・尾崎コレクション.都立中央図書館加賀文庫約50点1.合巻挿絵における連続図様研究方針の柱の一つとして合巻挿絵中の「連続図様」の考察をあげたが,この点に関してはかつて「東京大学文学部美術史研究室紀要」1号の中で発表したテーマをさらに深めたいという考えのもとになされたものである。見開き挿絵で通常は一画面として完結するものが,二図以上,一つの図様のもとに連続するこの手法は,先の論考においては,主として東京大学総合図書館所蔵の限られたコレクションを中心に調査した。この連続図様の使用例をいくつか挙げて論評したものであったが,今回の研究では,より一層大きなコレクションに当ることにより,もっと多くの使用例を抽出して,それらをパターンごとに分類することにより,本文との有効な連繋作用の考察を前回以上に深めることを目的とした。上記の目標が完全に満足できる形で果たされたとは言えないが,この手法の使用例は数十例程見出すことができ,先の論考においては文化年間を中心に流行したことまではわかっていたが,今回,この手法がその後も合巻挿絵特有の手法として,定着したものであったことが確かめられた。この手法のもたらす効果で有効なものの一つとしては,数図にわたる見開き挿図を一つの連続図様で結び,そこに本文中では同時に展開し,且つそれぞれが因果関係をもつ事件を一目で読者に知らしめるという点である。この具体例としては,先の論考約400点-113-約80点約30点
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