(11) 尚古集成館における島津家資料の調査研究一江戸時代鹿児島における狩野派絵画を中心に一共同研究(中間報告として)研究代表者:鹿児島大学教育学部助教授研究者:尚古集成館学芸員調査研究の目的:鎌倉時代より,鹿児島の文化において中心的存在である島津家の資料が所蔵されている尚古集成館の絵画に関する資料(文献も含めて)の美術史的見地に立った実証的調査を基本として,鹿児島の絵画の伝統は世に知れた明治時代の洋画に始まるのではなく,それ以前の絵画の流れに始まっていることを究明するのが最終的な目的である。そして,その伝統の中で生み出された鹿児島の絵画には,他の地域とは異なる鹿児島的特質,精神が一貫して認められることを解明したい。尚古集成館所蔵の絵画に関する資料調査というのは,島津家に遺された資料の調査を意味する。そして,この資料が,現在その内容把握において,ほとんど未調査であることに問題がある。そこで,まず尚古集成館の絵画に関する資料すべてにおいて,実見することを通して,それらの資料を各時代に分類し,内容を把握する必要かある。このことによって,鹿児島の絵画の流れの中心を見ることができるとも思える。そのような絵画資料の中でも,特に,江戸時代の狩野派の絵師木村探元の研究を進める。探幽様式を基本に,室町時代の雪舟系水墨画を取り入れたやや剛直な表現を持つ狩野派絵師としての,探元の作風を中心とした研究は,現在充分に行われていない。そこで,尚古集成館の資料を中心に,木村探元を中心とした江戸時代鹿児島の狩野派について実証的な研究を進めたいのである。そして,その様式の中に,他の時代の鹿児島の絵画と共通した精神が見られれば,日本美術史の中で,独自な地方美術史も確立できるのではないかと思われる。研究報告:島津家資料は,鹿児島においては尚古集成館(鹿児島市吉野町)に数多く遺されている。その中には,江戸時代薩摩藩御用絵師であり,同時代最も重要な絵師であった木村探元(1679-1767)をはじめとする絵師の作品も多数存在する作品調査から始められた。薩摩に生まれ,地元で絵画の手ほどきを受けた後,江戸で狩野探幽の子,探信守政永田雄次郎田村省一松尾千歳II -122-
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