で,渓仙の模索時代の数度の旅は,渓仙が新機軸を開くうえで最も重要な要因であったといえるだろう。(13) スキト・シベリヤ動物意匠の研究研究者:東京国立博物館東洋課主任研究官高浜調査研究の目的:ユーラシア北方草原地帯では,紀元前8■ 7世紀にスキタイ系文化と総称される騎馬民族の文化が興った。それらには幾つかの共通性が認められるが,特に顕著なのは,動物を主題としたスキト・シベリヤ動物意匠と呼ばれる美術である。これは中国の春秋・戦国時代の美術や後世のヨーロッパ美術にも影閥を与えており,その研究は単に北方ユーラシア文化だけでなく,この時代の広範囲にわたる文化交流を理解する上でも重要である。今回の研究では,この文化に関連する中国北方やオリエントの美術資料を調査して集成することを目的とした。これらの地域はスキタイ系文化の周辺に位してはいるが,その相互の影聾関係には本質的なものがあり,スキト・シベリヤ動物意匠の起源問題にも大きな関わりがあるからである。また中国北部の資料からは,ソ連で研究されているよりも直接的な年代の手がかりを得ることができる。研究報元来の計画ではスキト・シベリヤ動物意匠に関連したイラン及び中国北部の資料を日本国内で収集する予定であったが,昭和61年8月25日〜30日,西ドイツのハンプルクにおいて開かれたアジア・北アフリカ研究国際会議(ICANAS)に出席する機会を得たので,それを利用して,ケルンの東アジア美術館,西ベルリン・ダーレムの東アジア美術館,古典古代美術館,先史・早史博物館,東ベルリンのペルガモン博物館,スウェーデン・ストックホルムの東アジア美術館,ン博物館を訪れ,調査を行った。西ベルリンの古典古代美術館では著名なVettersfeldsの一括遺物,マイコープ出土品などのスキタイ遺物やアケメネス朝ペルシアの金属器,また先史・早史博物館ではコーカサスの後期青銅器時代から初期鉄器時代にかけての遺物を見ることができた。ペルガモン博物館ではバビロニア,ウラルトゥ,アケメネス朝,ネオ・ヒッタイトなどの資料を実見し,大英博物館ではアッシリア,ウラルトゥの遺物やオクサス遺宝,ルリスタン青銅器,アシュモレアン博物館ではルリスタン青銅器,BabaJan遺跡出土の大英博物館,アシュモレア秀-131-
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