① ② 他の両義性のうちにある。一方,作者である「私」の構想力も,或る願望像のもとに自己を他者へと粉飾・演繹し,逆に他者を自已へと帰納する(ハルトラウプの言う「自像的なるもの(dasSelbstbildnerische)」),両極的志向を免れない。そしてこの両極性は,作者の構想力が自己の実体を求めあぐねる自己分裂の意識によって主導される時,いっそう活性化されることになろう。かくて自画像の制作構造は,(イ)分裂意識によって自他の両極へと方向づけれらる‘美術家”と,(口)それ自体に自他の両極を内包する`鏡像”とを両軸とする座標の形で,大雑把に図示することができよう。(参考図)。鏡像と画家とが二元的に対決する自画像なるものは,こうして自他が不断に交替し,アンビバレントに拮抗する場で,「私」の分裂に悩みつつその実体を問うに適わしい画割を提供することになる。ところでムンクの画業一般は,造形的にも内容的にも著しくアンビバレント(二元価値的)な様相に充ちたもので,対賠的な諸要素が葛藤しあう磁場こそ,ムンクの制作の現場であったと言ってよい。「私の魂は,それぞれの方向に飛ぼうとしてあがいている二羽の猛鳥のようなものだ」というムンクの言葉は,彼の二元的な自我状況をよく示している。ベネシュはそれを「光と闇の世界の二元性」として特徴づける。「闇と光」一ーそれはムンクの生にとってのネガティヴなものとポジティヴなもの一般の比② ムンクの画業の両極性=自画像性自己(Selbst) 参考図自画像の制作構造(「美学」135号,所収)(Se lbs tverfrem:lung) lnduzieren (Das Selbstbildnerische) (Selbstvertrauthei t) 帰納自己異化ex 分岐点Z~iespaltigkeitsort 演鐸④ in 自己親和J 他在(An:lres-Sein) -140-D叫uzieren讐ensveen,!~'.~"
元のページ ../index.html#158