鹿島美術研究 年報第4号
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1150年頃の制作が推定されている「扇面法華経冊子」)に対して,12世紀後半に入って1 初段2 初段3 二段4 四段5 九段の1東下り一八橋6 九段の2東下り一宇津の山7 二三段の1筒井筒一筒井筒8 二三段の2筒井筒ー河内越10 ー七段11 四五段12 五八段13 六五段の1みそぎ一御手洗川14 六五段の1みそぎ一御手洗川15 六五段の1みそぎ一御手洗川16 六五段の2みそぎ一笛を吹く男17 九五段18 百段19 塗籠木七段せがいの水する作品を調べてみると,大まかに言って12世紀前半には第1の構図が主流であったのに対し,12世紀後半の作品では第二の構図法が顕著であるといった変化が認められる。また構図を左右する重要なポイントとして,視点の問題がある。これに関しても,現存遺品を検討する限りにおいて,12世紀前から後半へ時の推移に伴う変化を知り得る。すなわち視点が低〈設けられ,対象に接近して描かれるため,人物が主体で画面に対して大ぶりに捉えられている画面(「源氏物語絵巻」「観普賢経冊子」「法華経冊子」,くると,「寝覚物語絵巻」などに顕著な,極めて高い視点から建物内部をのぞき込むような構図法が登場してくる。その場合,描かれる室内空間は狭められ,人物の大きさも画面に対してかなり小さくなっている点も指摘したい。ところで「白描伊勢物語絵巻」を前述の観点から眺め,諸作品との比較を進めると,その祖本の制作時期を判断することが可能となった。すなわち,白描本の建物を含む11の画面のうち,第1の構「白描伊勢物語絵巻」現存画面一覧表定家木段数初冠初冠二条の后ーひじき藻二条の后西の対年の二年を待ちわびて遠山記念美術館水鏡行く蛍長岡の里忘れ草彦星逸翁美術館某家古屋家旧蔵逸翁美術館逸翁美術館大和文華館大和文華館逸翁美術館大和文華館久保惣記念美術館某家東京芸術大学安田家旧蔵逸翁美術館五島美術館某家某家常盤山文庫所蔵-146-, ニ四段

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