(19) 室町時代山水画モチーフの文学的背景と自立過程(継続)研究代表者:東京国立博物館資料部研究員高見沢明雄調査研究の目的:室町時代山水図において,絵画モチーフは背景としてもつ文学的意味が失われ,あるいは意味の制約から脱して形態自体として独立してゆく方向にあった。しかしこの形態の自立過程は,大局的な流れとしては把握できるものの,個々の事例についてみれば決して一様に展開したものとはいえない。また題画詩と絵画との関係も単純に対ーに対応するわけではなく,より複雑な様相を呈している。この過程,すなわち詩画軸制作時に文学的題材がどのように画家を規定したのか,またそれがいかにして形態自体の伝承へと転化していったのかを具体的に跡づけ理解するためには,単に絵画モチーフに文学的意味をかぶせて足れりとするのではなく,それらの対応関係・相関関係の強弱にまで踏み込んで解釈できるようにすることが必要である。本研究では具体的な資料に基づき,これを出来るかぎり網羅的に扱うことにより,定量的な評価の試みとする。研究報告:昭和61年度は2ヶ年計画の第1年度として,研究遂行に必要な「道具」と基本的な「データ」の作成についての検討を行った。以下はその経過報告である。研究の目的は室町時代山水図と中国文学(漢詩)との関係を明らかにすることであるが,同時にまたそれらを例にとった作品解釈の方法論でもある。恣意的な史・資料選択による恣意的な作品の解釈を避けるため,史・資料をなるべく網羅的に扱い統計処理等を加味して,定量的評価の試みとすることである。そのための「道具」としてコンピューターは有力であるが,現在のところ知識処理は未開拓の分野でありこの研究も先ず「道具」づくりから開始せざるを得なかった。研究を遂行するために必要な「道具」及びデータは多々あるが,今回は以下のものに限定してデータ構造,データベース化に際して使用するソフトウェア等についての検討及び試験的なデータ入力を行った。本年度は必要な機器及び図書の整備を重点的に行ったため,本格的なデータ入力は次年度に行うこととした。島尾新東京国立文化財研究所II_ 158 -
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