鹿島美術研究 年報第4号
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村茂する調査・研究」(千野),「平安から江戸初期に至るやまと絵――—障屏画,絵巻の調査・(20) 室町時代土佐派作品の調査研究一中世後半期におけるやまと絵の展開一研究代表者:東京国立博物館美術課絵画室長調査研究の目的:室町時代のやまと絵は,古代・中世前半期の伝統的なやまと絵と,近世における和様絵画とを結ぶ重要な位置を占めている。それにもかかわらず,室町時代のやまと絵の研究は,これまで単発的な紹介論文の発表を除き,ほとんど進展していない。余りにも多種多様な作品が伝存する一方で,過去の研究の蓄積が乏しく,作品を整理,分類する基準すら定まっていないからである。特に,当時のやまと絵を全て土佐派に帰する古典的な態度が,混乱を一層大きくしている点は否定できない。こうした状況にあって,現在最も必要とされるのは,土佐派そものの作品を具体的かつ総合的に調査し,その様式や特質を把握し,研究の基盤を固めることであると思われる。この研究の目的は,室町土佐派の作品研究を通して,まとまりのつきにくい室町やまと絵の研究に一つの着実な基盤を提示し,併せて室町やまと絵の史的価値を再確認することである。研究報告:室町時代のやまと絵に対する関心が近年とみに高まりつつある。それはこの時代のやまと絵の絵画史上における重要性が再認識されたことと,あたかもこの分野の屏風や扇面などの作品が相次いて多数新発見されたことによるものである。この研究はそうした傾向を鑑み,土佐派を中心とする室町時代のやまと絵に焦点を当て,その混乱した実情を少しでも整理,解明しようとするものである。これまで当研究のメンバーは,個人的に,「中世絵巻の絵と詞書の両面からの検討,及び江戸時代における模本の研究」(松原),「やまと絵と様式的に関連深い中世仏画,神道絵画の調査・研究」(中野),「中世やまと絵作品,ことに土佐光信周辺の絵巻に対研究」(村重)などの研究活動を展開させてきた。以上の実績を踏まえて,昭和61年度より3ヶ年計画で鹿島美術財団の研究助成を申請した。その研究計画は,61■2年度に,(1)室町時代土佐派作品の総目録作成,(2)土佐派及びその周辺の作品の調査,(3)資II II /!主任研究官松原企画課普及室長資料第二研究室員千野香織中野照男-161-

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