鹿島美術研究 年報第4号
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図1レンプラント『聖ベテロの否認」(断片)『レンプラント・コーバス』によれば,現存部分の横幅は元の半分程度で,オリジナルは21.5cmX約30cmと見なされている。しかし,何ら特別の根拠が明示されているわけではない。この鋸板油彩画のオリジナルの大きさを推定する手掛かりとなるのは,既に検討したバリにあるレンプラント(?)のテッサンである。その図の構図は,先に挙げたファン・フェーンの図に比べてこのデッサンの方に一層共通性がある。画面右から左へ順に立っている兵士,焚火の炎で明る<照らされた左側へ足を出す兵士と,刀を腰に付け逆光で陰になった兵士まで顆似しているからである。しかし,デッサンの左側で焚火に腰掛けた人物の部分がプリヂストンの油彩画には欠けている。したがって,ブリヂストンの油彩画に欠けている部分はパリのデッサンで槍を持って立つ兵士から左端の人物に至る全体の約三分の一の相当する。この比率に基づくとプリヂストン美術館の銅板油彩画のオリジナルの横幅は甲胄を着た兵士のうしろの棚の部分約3cmを加え,約26cmになる。その結果,銅板油彩画は22.lcmX約26cm程度となる。掲載写真は尾崎彰宏氏の調査報告レンプラント「聖ペテロの否認』の再検討ープリヂストン美術館の作品調査報告ー(『文化』第48巻34号1985年)から引用複写したものです。東京プリヂストン美術館図2図lの細部-202-

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